謎の宮殿と呼ばれる「斎宮」に仕えることが決定した斎王の、都から伊勢までの旅を再現した「斎王群行」が6月7日、多気郡明和町の「斎王まつり」で再現された。
前年度斎王役の曽根理津子さんから檜扇を伝達される第25代斎王役の鳥井麻生さん。司会には第20代斎王役の大西敬子さんも。
斎王制度は、天皇に代わって伊勢神宮に仕え、都から伊勢に派遣された。天皇の代替りごとに皇族女性の中から選ばれ、第10代崇神(すじん)天皇の皇女豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)、第11代垂仁天皇の皇女の倭姫命(やまとひめのみこと)が斎王のもととする説もあるが、その実態は不明。制度上最初の斎王を、天武天皇(670年ごろ)の娘の大来皇女(おおくのこうじょ)とし、制度が廃絶する後醍醐天皇の時代(1330年ごろ)まで約660年間続き、その間記録には60人余りの斎王が天照大神に仕え、祈りを捧げてきた。しかしながら、神に仕える身ゆえに恋をすることも許されず、数々の悲恋物語もあったという。
今年は、斎宮跡が1979(昭和54)年に国史跡に指定され30年、斎宮歴史博物館(明和町)20周年にあたる。同祭りは1983(昭和58)年、地元婦人会の人たちが、歴代斎王や斎宮にかかわった人々をしのび、鎮魂の意味を込めて始められたのがきっかけで、27回目を迎えた。
「斎王群行」は、平安京を出発した斎王が、斎宮に到着するまでの5泊6日旅を再現したもの。十二単姿の斎王が「葱華輦(そうかれん)」と呼ばれる輿(こし)に乗り、内侍や采女ら約120人の平安装束に着替えた群行が、町内約1.7キロを、行列を作って行進した。今年の斎王役には鳥井麻生さん、子ども斎王には田所藍耶さんが選ばれた。
昨年度第24代斎王に選ばれた曽根理津子さんは「最初は緊張していてまったく余裕がなかったが、群行が始まると皆様から祝福され斎王様としての実感がわいてきた。赤ちゃんを連れて近寄ってくれたり、わざわざ車いすに乗って声援を送ってくださったり…。とてもうれしく、感動した。鳥井さんも1年間斎王として頑張って務めていただければ」とエールを送る。
同町出身の長岡成貢さん作曲の同まつりテーマ曲「組曲・斎宮物語第三楽章『斎王(いつき)の舞・慶び』」(作詞=尾上たづ枝さん、振り付け=勝美伊三次さん)は、2日間とも地元小学生らによって舞われた。
祭りの司会は、第20代斎王役で、三重県を代表する女性タレントとして人気上昇中の大西敬子さんが務め、同6日の前夜祭では三重テレビ「ええじゃないか。」に喜多さん役で出演していたミュージシャンのたなかつとむさんが演奏を行うなどで大いに盛り上がった。