大漁満足、家内安全、商売繁昌を願い海に向かって「ワッハッハ」と初笑いする志摩の奇祭「初恵比寿大祭」が1月20日、恵比寿神社(志摩市浜島町)で行われた。
みんなで初笑い「今年の初笑いはよく透き通っていた。経済もよくなるのでは」と西井宮司。
浜島・宇気比神社の境内にある恵比寿神社は、英虞湾の入り口と太平洋が眼下に迫る眺めの良い恵比寿ヶ丘にあり、神殿の隣には1934(昭和9)年建造のカラフルに彩られたコンクリート製・高さ約2メートルの巨大恵比寿像が鎮座する。その恵比寿像の鼻がなぜか、最短では翌朝には欠けてしまうという。
同神社の西井憲三宮司は「いつの日か漁師が、恵比寿像の鼻を削って漁をしたところ思いのほか大漁だったので、深夜など誰にも見られないように恵比寿像の鼻を削る人が増え『鼻かけ恵比寿』と呼ばれるようになった。『鼻を取る』は『一番乗り、先んじる』という意味からカツオ船などが早朝から競争して、いい漁場に着けるようにとの願掛け。現在の像の以前にあった享保年間に建てられたとされる恵比寿像の時からの風習では」と説明する。
この日、氏子や漁業関係者が「鼻が付いた恵比寿像」の周りに集まり、西井宮司が「初笑いの祭典、ご利益があるように大いに笑って下さい」と掛け声をかけると「ワッハッハ」「ワッハッハ」「ワッハッハ」と3回笑った。
これまで55年間初笑い行事を行ってきた西井宮司は「今年の初笑いはよく透き通っていた。この地方の経済もよくなるのでは」と占った。「誰にも見つからないように鼻を削ることがいいらしい。きっとまた(欠けて)なくなるよ(笑)」と鼻かけの由来を寛容に受け入れる。
祭りに参加した約500トンのカツオ船「亀洋丸(きようまる)」船主の妻=井上こまつさんは「今はもう12、3年前に廃業したが、操業しているときは本当にここの鼻かけ恵比寿さんはご利益があった。1航海(約60日)で1億5千万円の水揚げをした記録もあった。毎日、心願込めてお祈りに来ている」と話す。