「今日一番のヒット作は飯高町の『でんがら』と志摩町の『きんこ』を使った郷土料理の出会い。どちらも完成された伝統料理だがこの交流を通して出会った。あり得そうであり得なかったこと」と話すのは、三重県立相可(おうか)高等学校(多気郡多気町相可)食物調理科の専門調理師教諭兼、同高校調理クラブ顧問を務める村林新吾先生。
三重県松阪市飯高町を中心に櫛田川の上流(セレブ)地域の活性化を目指す「櫛田川セレブの会」(会長=北川京子さん)と志摩市の郷土料理研究などの活動する「志摩いそぶえ会」(会長=伊藤泰子さん)が5月28日、三重県の山の幸と海の幸を持ち寄って料理を創作し交流をしようと志摩文化会館(志摩市志摩町和具)調理室に集まった。
きっかけは、両グループの会員が3月に三重県が主催した「グリーンツーリズム研修会」で岐阜県郡上市に出かけた帰りのバスの中で意気投合し、料理交流会を開催しようと約束したことから。相可高校の村林先生に指導もお願いしよう――と話はさらに盛り上がり実現した。
持ち寄った食材は、山の幸が、シカ肉、シシ肉、アマゴ、シメジ、クレソン、ヤマウド、イタドリなど、海の幸が、カツオ、アワビ、サザエ、ヒオウギガイ、ヒジキ、アオサなど。「当日何を作るかはまったく考えていないので、何ができるかまったく予想できない(笑)。村林先生のアドバイスを受けながらさらにおいしく出来上がるように楽しみたい」と伊藤さんは調理開始前に感想を漏らした。
約3時間後完成した料理は全部で32品。新鮮なカツオのたたきにクレソンをまぶしたカルパッチョや、山菜とヒオウギ貝のだし汁で炊き上げた五目御飯、ヒジキとシシ肉の炒め料理など。中でも村林先生は、両地域の伝統料理の飯高町の餡と餅を朴葉で包んだ『でんがら』ときんこ芋と呼ばれるサツマイモの干し芋『きんこ』を合わせた和菓子料理に対して「商品化も可能では――」と絶賛した。
伊藤さんは「食材の交流を通して、今後さらに新しい料理が出来上がり『新・郷土料理」となるかもしれない。そして今後は、人が、互いの地域に宿泊しながら海と山の暮らしを体験するような交流に発展させていきたい」と意欲を見せる。