「初音ミク」のコスプレミュージシャンでモデル・タレントの麻倉ケイトさんと伊勢市出身でトランスジェンダー活動家の山口颯一(しょういち)さんによるトークイベント「LGBTって知ってますか?ふたりのトークショー」が6月13日、伊勢志摩ロイヤルホテル(志摩市磯部町)で行われた。
LGBTは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの略。主催したまちづくりグループ「楽笑(らくしょう)」代表の仲井伸豊さんは「偏見なくLGBTという言葉、存在を知っていただき、お互いを認め合い誰もが自由に意識せず生きることができる社会になればと思い企画した」と話す。
麻倉さんは、日本初の「ニューハーフ花嫁」としても話題を集め、現在はバーチャルアイドル「初音ミク」の衣装でオリジナル曲を歌うプロミュージシャン。体は男性だが心は女性の「MTF」(エムティーエフ、Male-to-Female)だ。一方、山口さんは麻倉さんとは逆で、体は女性として生まれたが心は男性の「FTM」(エフティーエム、Female-to-Male)。
トークショーでは、生まれた時の体と心がほかの人と違うことをある時気付き、そのことを親や友人、先生に打ち明けられないで悩み苦しみ、時には自殺まで考えた経験、カミングアウトをすることがどれだけ大変だったかなどのエピソードを披露した。
麻倉さんは「2009年、ファンが多くいるコンサートのステージでカミングアウトした時、みんなが優しく受け入れてくれた。カミングアウトしてからは全てが前向きにとらえることができた」。山口さんは「カミングアウトして仲間が離れていったらどうしようと悩んだ。一番理解してもらえないと思っていた父が『もっと早く言ってほしかった』とすぐに理解してくれたことがうれしかった」と話す。
山口さんは、昨年5月から三重県の教育委員会などの依頼を受けて人権教育に関する講演活動を積極的に行う一方、自身のフェイスブックやツイッターで同じ悩みを持つ人たちに寄り添いながら相談相手となっている。現在、ホルモン注射や手術などで男性化した自身の体を鍛えるとどうなるかを動画共有サイトユーチューブで「FTMカラダ改造計画」と題して公開している。
トークショーに参加した地元小学校の講師の宮本秀明さんは「これまで2000人以上の教え子がいるが、LGBTだと思う生徒には遭遇していない。いや、気付かなかった。100人に1人とか20人に1人の割合でLGBTが存在するといわれているので、とても勉強になった。自分ができることを考えて学校でも問題提起してみたい」と感想を述べる。
仲井さんは「LGBTの人たちが修学旅行であまりいい体験をしていないことを聞いていたので、志摩に来ていただいてもう一度修学旅行を体験してもらおうと計画している。これからもさまざまなことに意識を持って活動していきたい」と意欲を見せる。