地域に光を当てた「地域主役型映画」を一堂に集めた映画祭「賢島映画祭」が9月6日、「賢島宝生苑(ほうじょうえん)」(志摩市阿児町)で開催され、「けの汁」がグランプリに選ばれた。
主催する「志摩ムービークルーズ」(志摩市大王町、TEL 0599-72-2412)は昨年5月30日、地元有志12人によって設立された市民団体。船越中学校(同)が閉校することを題材にした映画「校歌の卒業式」(2013年)の製作に携わったことをきっかけに、「映画の製作を通して地域を巻き込み、地域が元気になっていく様を、実際に見て感じ、地域主役型映画をもっと普及させよう」と同祭を企画した。
同映画祭への応募条件は、「主役クラスのキャストが最低1人その地域の人であること」「本編が30分以上であること」など。映画としての技術的な完成度よりも撮影した地域・人々をどれだけ魅力的に映しているか、どれだけ地域を巻き込んでいるかなどが審査対象となる。
第1回となった同映画祭へのエントリーは次の6作品。ニートが市議会議員選挙に立候補する実際にあった物語を映画化した「ニート選挙」(2015年)監督=鈴木公成さん、沖田光さん。栃木県鹿沼市に住むダンス部所属の高校生チエコが、市のPR映像を作る過程で自分の殻を破り成長する姿を描いた「チエコ クエスト」(2014年)監督=松本卓也さん。愛知県西尾市の市町村合併を契機に製作、架空の国「オシニ」で起こる不思議なことを描いた「オシニ」(2014年)監督=石丸みどりさん。伊勢志摩の自然を撮り続けるカメラマン堀松批佐さんを追うドキュメンタリー「伊勢志摩の風景に魅せられた男」(2015年)監督=山本泰久さん。青森県津軽地方の郷土料理「けの汁」を題材にしながら家族・故郷への思いを描いた「けの汁」(2011年)監督=千村利光さん。廃校が決定している志摩市の越賀中学校に赴任した新任の英語教師の思いを描いた「キボウノトビラ」(2014年)監督=山際新平さん。
この日は朝9時から17時まで全作品を上映し、審査の結果以下の賞が決まった。
グランプリ=「けの汁」、準グランプリ=「キボウノトビラ」、技能賞=「ニート選挙」、敢闘賞=「オシニ」、ユニーク賞=「チエコ クエスト」、ポテンシャル賞=「伊勢志摩の風景に魅せられた男」、主演男優賞=笠原賢人さん(ニート選挙)、主演女優賞=伊勢市出身の桐島ココさん(キボウノトビラ)、助演男優賞=石田法嗣(ほうし)さん(けの汁)、助演女優賞=浜丘麻矢さん(同)、金澤美穂特別賞=筑井美佑輝(みゆき)さん(チエコ クエスト)。
同映画祭開催のきっかけとなった映画「校歌の卒業式」(監督=宇井孝司さん)でヒロイン役を演じ、今回審査委員も務めた女優の金澤美穂さんは「地域主役型映画が一堂に集まると、演じている人の『内圧(地域への思い)』の強さをとても感じる。今回『校歌の卒業式』に出演させていただいたことがご縁で第1回の審査委員を務めさせていただき、しかも『金澤美穂特別賞』なるものまで選ばせていただき恐縮している。チエコ クエストの筑井さんは素朴でとがっていない感じで、演技にもしなやかさを感じた。(女優になっていても、なっていなくても)いつか会ってお話してみたい」と話す。
賢島は、来年5月に主要国首脳会議「伊勢志摩サミット」の開催予定地。同映画祭の合言葉は「賢者(けんじゃ)が島にやってくる」。志摩ムービークルーズ会長の橋爪吉生さんは「『地域主役型映画』の発祥地として賢島を起点に毎年、映画祭を開催し多くの映画関係者、ファンが賢島を訪れるようになることを目指す」と思いを込める。