志摩市在住の写真家・泊正徳さんが11月26日、「宙に浮く富士山」の撮影に成功した。
日本最高峰・標高3776メートルの富士山まで、直線距離で200キロ以上離れた伊勢志摩。日中はほとんど観測することができないが、早朝の条件がそろった時にだけ現れる。昼間に観測できるのは年に数回あるかないか。伊勢志摩からの富士山は極めて出現率が低い。
「宙に浮く富士山」は伊勢志摩の海岸から見た時に、海の上に浮き上がったように見える自然現象のこと。観測できるエリアは、日本全国の中でも鳥羽市と志摩市の東寄りの一部の海岸だけ。宙に浮くのは寒くなる冬場だけで、春夏(秋)には浮かない。
仕組みはこうだ。海水と水面近くの空気との温度差によって光が屈折して起こる「蜃気楼(しんきろう)」の一種「浮島現象」によって、富士山が宙に浮いたように見える。富士山から志摩半島は200~230キロ離れ、海抜0メートルの地点から富士山を見ることができる最遠が伊勢志摩になる。さらに志摩半島は、沖を流れる暖流=黒潮の影響を受け冬場でも海水温が高く、寒くなると海水温と水面近くの気温の差が大きくなるため、浮島現象が起こりやすい。
伊勢志摩からの富士山は、1707(宝永4)年の噴火でできた標高2693メートルの宝永山までが見えることから、標高2300メートル以上の山頂部分が水平線に現れる。伊勢湾沿岸の三重県側からも見えるが、手前(愛知県と静岡県)に高い山があるため水平線の上からは見ることができない。
泊さんは「11月23日にもきれいな富士山が観測できたが(気温が)暖かかったので宙に浮いたようには見えなかった。25日は宙に浮いたように見えたが上に雲がかかっていた。今朝はくっきりときれいな富士山だった。撮影時間は5時39分、撮影場所は阿児町の安乗(あのり)港」と説明する。
「『宙に浮く富士山』を撮影できると『今年も冬がやってきたな』と思う。『宙に浮く富士山』を撮影できるのは、日本で唯一伊勢志摩からだけなので、富士山を撮影し続けるプロ・アマのカメラマンにはぜひともチャレンジしてもらいたい。たくさん来てくれればうれしい」と話す。