昨年、南伊勢町でモリアオガエルの卵塊を発見し産卵シーンの撮影に成功した北井誠也さんが5月26日、今年もモリアオガエルの産卵シーンの撮影に成功した。
二見町在住で伊勢志摩経済新聞のカメラマンでもある北井さんは、レッドデータブックに載る絶滅危惧種・準絶滅危惧種に指定されている希少野生動植物を探し求め観察・撮影し、その写真の展示を通して生存の危機に直面している動植物の存在を知らせ保護を訴えている。
北井さんが5個のモリアオガエルの卵塊を発見したのは16日。その後の観察で23日にさらに3個を見つけた。その後も産卵シーンを撮影しようと観察を重ね、雨が降る26日の23時過ぎ、1匹の雌の背中に3匹の雄が群がり産卵と受精が行われている現場を見つけ出した。北井さんは撮影時の様子を「真っ暗の雨の中、一人で傘を差しながら10メートル以上離れた場所から『動く緑色の物体』を見つけたので900ミリの望遠レンズで何度もシャッターを押した。風もあり、『物体』が揺れていたので撮影には苦労したが、後で確認したらモリアオガエルだったので良かった」と話す。
カエルに詳しい鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)の飼育研究部の三谷伸也さんは「普段モリアオガエルは、森林などで生活し産卵期になると、木の枝などが垂れ下がった静かな池や沼を求めて山を下り産卵する。一般的にカエルは水中に卵を産むが、モリアオガエルは木の枝に白い泡状の卵塊を作るのが特徴。卵を産む環境が限られるため、人間による自然破壊などによって産卵場所や生息域が侵食され、急激に少なくなっている個体の一種」と説明する。
北井さんはこれまでも、5日にあった猿田彦神社(伊勢市宇治浦田)のお田植え祭が執り行われている神田の隅でシュレーゲレルアオガエルの雄を発見し水田のあぜに卵塊を見つけたり、23日には伊勢志摩スカイライン(朝熊町)の山頂展望台付近で三重県のレッドデータブック準絶滅危惧種に指定されているニホンヒキガエルを発見したりしている。
三谷さんは「繁殖期に入るカエルがこの時期水田などでよく鳴いている。耳を澄ますとそれぞれに違う鳴き声をしていることにも気付く。コンクリートで固めた用水路や自動車が行き来するアスファルトの道路が、これまでの小動物の生活環境を一気に変えてしまい、訴えることもせずどうしようもなく絶えてしまう動物がいることも知ってほしい」とも。
伊勢志摩地方も27日に梅雨入りし、稲作に必要な雨が適度に降り、川や水田、沼地ではカエルたちが元気に鳴いている。自然の営みが今年も繰り返されている。