和泉流20世宗家和泉元彌さんらが9月25日、新しく改修された内宮参集殿の白木の香り漂う能舞台で「和泉流狂言」の奉納演舞を行った。
約350年前までは毎年神宮奉納をしていたという「和泉流狂言」を和泉さんらが350年ぶりに復活させ、今回で15回を数えた。和泉さんらは毎年の奉納のほかこれまでも2002年に倭姫宮鎮座80周年記念や2006年に「一日神領民」としてお木曳(おきひき)に参加するなど伊勢との縁も深い。
舞台では和泉元彌さんのほか、和泉淳子さん、三宅藤九郎さん、和泉采明(あやめ)さん、和泉慶子(きょうこ)さん、和泉元聖(もときよ)さんら一門が出演し、狂言「大般若」「痺(しびり)」「舟ふな(ふねふな)」「末廣かり(すえひろかり)」、小唄「兎(うさぎ)」を披露した。
9月20日に新たに公開されたばかりの参集殿は、1969(昭和44)年築コンクリート製の建築物で今回、耐震補強を目的に改修。設計は「土屋辰之助(つちやしんのすけ)アトリエ」(東京都墨田区)が担当。外観・内観の壁材にヒノキを使用し純和風でモダンなデザインを採用、神域内の景観にも配慮した。そのほかLED照明や省エネタイプの空調などの設備を導入、新たに授乳室も完備した。
併設の能舞台は、徳力富吉郎画伯が描いた老松の鏡板はそのままに、同じくヒノキ板を張るなどして新しさを強調。これまで窓枠のない戸板で仕切られていたものをつり下げ可動式のモダンなガラス戸に変更し休憩所からも自由に舞台を見学できるようにした。
新しくなった能舞台で演舞した和泉元彌さんは「白木の香りがとても素晴らしく、新しくなった舞台で狂言を奉納させていただけたことにただただ感謝。ガラス戸にしたおかげで国立能楽堂の舞台と同じ、正面席と脇正面席ができたような感じを受け演舞していてもとても気持ちがよかった」と感想を漏らした。
1年を通して同舞台では、能や舞踊のほかさまざまな流派の家元らが奉納する。10月7日には「大徳寺昭輝の独り語り」の奉納(14時~15時)がある。奉納行事の日程は決定次第、伊勢神宮のホームページで確認できる。