「伊勢の国冬桜の会」(伊勢市二見町、TEL 0596-43-4311)が10月2日、標高555メートルの朝熊岳(あさまだけ)の麓にあり三重県営サンアリーナ(朝熊町)の周辺を取り囲む朝熊山麓公園(同)に10年かけ冬桜1000本を植樹した。
2002年から市民と共に冬桜の苗木植樹活動を行ってきた同会。活動のきっかけについて、同会会長の小西蔀(しとみ)さんは「愛知県小原村(現豊田市)で満開の冬桜を見て感動したことから伊勢にも冬桜の名所を作りたいと活動を開始した」と話す。
今回植樹した桜は十月桜(ジュウガツザクラ)。「冬桜」と呼ばれる品種の一つで、毎年4月上旬と10月の年2回、白く小さい八重の花を咲かせる。これまで小福桜(コブクザクラ)などの品種も植えた。
この日は市民ら約400人が参加し、スコップで穴を掘り約1.5メートルの苗木を植えた。念願だった1000本目は、参加した人たちが見守る中、小西さんと日本人初の宇宙飛行士で同会顧問を務める秋山豊寛さんらが丁寧に植えた。記念プレートが取り付けられると拍手が沸き起こり、皆で祝った。
10年間欠かさず植樹活動に参加してきた「伊勢いなほの会」の中山翠(みどり)さんは「来年の10月にはみんなでお花見をしようと話しながら植樹した。今から楽しみ(笑)」とほほ笑む。
前日の1日には伊勢市福祉健康センター(八日市場町)で東日本大震災被災者支援のためのチャリティーバザーと秋山さんの講演会も開かれた。講演では「がんばれ西日本!」と題して福島第1原発から半径32キロの福島県旧滝根町(現田村市)に住み農業を主に生活をしてきた秋山さんの実体験を基に、「東日本が頑張るには西日本が頑張らないといけない」ことなどを訴えた。現在、秋山さんは群馬県藤岡市に移住し農業の再開を目指している。
秋山さんは「市民一人ひとりの手で桜を植え公園を管理することの素晴らしさ。ほかの地域ではなかなかできないこと。この桜には伊勢の人たちの心意気が宿り、後世に引き継がれていく」と称賛した。小西さんは「来年には1000本の冬桜を見ながら花見をしたい。そして東北の人たちに何かできることをしたいと」と意欲を見せる。
爽やかな秋空の下で、昨年植樹した桜が細く小さい枝いっぱいに花を咲かせて参加した人たちに希望を与えていた。