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苦節7年、漁師と海女業をしながら50歳で高校卒業-志摩・代々木高校

苦節7年、漁師と海女業をしながら50歳で高校卒業-志摩・代々木高校

苦節7年、漁師と海女業をしながら50歳で高校卒業-志摩・代々木高校

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 3月10日、広域通信制高校の代々木高校(志摩市阿児町神明)の卒業式で、「これ(卒業証書)をもらうのに7年かかりました。50歳になってしまいました(笑)」と卒業のあいさつをしたのは、同町在住の石神昭年さん。

念願の卒業証書を受け取る石神昭年さん

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 石神さんは34年前、みんなと変わりなく「普通に」普通科のある志摩高校(磯部町)を受験し入学したが、2年で退学に。その後さまざまな仕事を経験し、漁師や海女業と宿泊施設・飲食店などの運営をしながら2008年4月、三重県立水産高校(志摩町)の漁業などを教える海洋科に入学した。

 「漁師をしていると、後継者がいないこと、漁業で生計を立てようとしても厳しいことなど、ネガティブな問題ばかり。後継者の育成が大切だと実感。それには高校も出ていない自分では?という思いと、一から海について学ぼう――と県立の水産高校に入ろう決意した」と石神さん。

 「45歳で現役の高校生」というセンセーショナルなデビューで多くのマスコミにも注目され、約30歳も年下の同級生からも慕われた。最初の1年間はほとんど休まず授業を受け順調よく2年生に進級したが、毎朝3時30分に起床し、授業に間に合うまでの約5時間で漁業と宿泊業をこなしていた体と精神もそのころから限界に。2年生で習得するべき単位を落とし留年してしまった。2回目の2年生の10月、伊勢エビ漁で忙しく生活のため仕事を優先せざるを得なくなり、その年度でも単位不足で3回目の留年を懇願したが認めてもらえず、同校に転校することになった。同校では規程のスクーリングへの出席とレポートの提出を真面目に行い、晴れてこの日の卒業式で、同校の卒業証書を受け取ることができた。

 石神さんは「高校生としての4年間に、漁師を目指す全国からの若者15人に対して漁業の指導を行った。現在も4人を独立した漁師に育てようと指導中。今日もその『弟子』に高校まで車で送迎してもらってきた」と打ち明ける。「現在活動中の『後継者育成施設 漁師塾 もやい』(阿児町神明、TEL 0599-45-5544)を通して若手漁業者の育成をさらに発展させていく予定。やる気になれば50歳でも高校を卒業することができる。自分の経験を反面教師として今の若者に何かを伝えることができれば」と瞳を輝かせた。

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