国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である「国際記念物遺跡会議(イコモス)」が4月30日、「富士山」を世界文化遺産に登録するよう勧告した。今年6月にカンボジアで開かれる第37回ユネスコ世界遺産委員会で、正式に決定される見通し。
5月2日の早朝4時30分ごろ、200キロ以上離れた伊勢志摩の地から「世界遺産登録へ一歩前進」のニュースを祝福するかのように富士山はくっきりとその姿を表した。気温が低く空気が澄んだ冬場には比較的観測できるが、春霞がかかるこの時期はなかなか見ることができない。
撮影に成功したのは今年4月から志摩市立波切中学校と船越中学校の統合で新しくなった大王中学校(志摩市大王町波切)教頭の向井正明さん。向井さんは「冬型に近い気圧配置で、空気も乾燥し風もあり気温も低かったので横山展望台(阿児町鵜方)の上から狙った」とコメントする。
向井さんは「ちょうど4月29日に、『アクティブ・ブレイン協会』(東京都中央区)会長で『富士山を世界遺産にする国民会議(富士山会議)』(東京都港区)の運営委員会委員長の小田全宏さんの講演を聞いたばかりで、『世界遺産登録が確実』だと聞いていたが、イコモスからの勧告のニュースを聞いて本当に良かったと思った」と話す。「志摩から見えることを知らない地元の人もいて、撮影した富士山の写真を見せるとみんなびっくりする。200キロ以上離れた志摩から見える富士山もとても美しいのでぜひ志摩にも見に来て欲しい」とも。
富士山の世界遺産登録が決定すると、横山展望台からは2004年に登録され来年10周年を迎える「紀伊山地の霊場と参詣道(熊野古道)」を成す山々へ沈む夕日、朝日を受ける富士山と、2つの世界遺産が同時に撮影できるスポットとなる。