二見興玉神社(伊勢市二見町)境内社・竜宮社で6月23日、津波の教訓をいつまでも忘れないように、また災害が起こらないように祈願し、被災者を供養する神事「郷中施(ごじゅうせ)」が行われた。
1792(寛政4)年、この地方を襲った大津波によって江(え)地区の民家約20戸が流出し、残った家はわずか5、6軒。同神社の氏子たちが施し合い助け合い、この危機を乗り越えた。郷中施は、この教訓を後世に伝えるために、海の神・綿津見大神(わたつみのおおかみ)を祭る竜宮社で、被害のあった旧暦の5月15日に毎年欠かさず執り行われている。
この神事の神饌(しんせん)には、「(津波を)急に、見るな、待つな」の語呂合わせで「胡瓜(キュウリ)」「海松(ミル)」「松菜(マツナ)」などが納められ、この日も約80センチの木舟に神饌を載せ、竜宮社前の竜宮浜から同神社の巫女(みこ)2人が腰まで海水に漬かり海に流す儀式を行った。
茶屋地区の井坂孝区長は「郷中施を執り行うことで、津波の教訓を再認識することになり、気を引き締めることができる。組によっては何軒かで食事に行ったりしてコミュニケーションを取るようにしている」と話す。