全国の水族館関係者や水産庁、学識経験者スナメリに興味のある一般の人ら72人が出席しスナメリについての研究成果や飼育事例など発表する「スナメリ国際シンポジウム」が8月21日・22日、鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)レクチャーホールで開催された。
水槽の中でとても愛くるしい仕草をするスナメリ、飼育記録50周年でシンポ
同シンポは、今年同館がスナメリの飼育を開始してから50周年を迎えたことから同館とスナメリ研究会の主催で開催。スナメリの飼育技術の進展と将来の資源管理をテーマに議論を深めた。参加者には韓国の「釜山(プサン)水族館」や、国内の「マリンワールド海の中道」(福岡県)、「下関市立しものせき水族館・海響館」(山口県)、「宮島水族館・みやじマリン」(広島県)、「神戸市立須磨海浜水族園」(兵庫県)、「海遊館」(大阪府)、「太地町立くじらの博物館」(和歌山県)、「名古屋港水族館」「南知多ビーチランド」(愛知県)、「横浜八景島シーパラダイス」(神奈川県)など水族館関係者の姿も多くあった。
スナメリは、小型の歯クジラの仲間で、ペルシャ湾から日本にかけてのアジアの海に生息。日本沿岸では大村湾、有明海、瀬戸内海、伊勢湾、三河湾、東京湾、鹿島灘、仙台湾などに生息。体長1.5~2メートルで薄い灰色、皮膚はホットケーキのように非常に柔らかい。イルカのようにクチバシや背ビレがなく丸い頭をしているのが特徴。胸ビレはかじをとる役割をして5本の骨がある。
同館館長でスナメリの飼育・研究を今も続ける古田正美さんは「1973(昭和48)年に地元の漁師から『スナメリいらんか?』と保護されたスナメリを譲り受けたのがきっかけで飼育。初めは全くの手探りだった」と当時を振り返る。「現在、鳥羽に6頭、南知多に2頭、宮島に5頭、しものせきに6頭、海の中道に3頭、大分マリーンパレス水族館・うみたまご(大分県)に1頭の計6館23頭(雄10頭、雌13頭)が飼育されている。23頭では継続した教育展示は難しく、飼育頭数の増加を目指す必要がある」と訴える。
鳥羽水族館の若林郁夫さんは、今年5月2日に生まれた子どもの飼育状況について詳しく説明。50年で16回の出産が行われ、その飼育経験を元に今も24時間体制で人工哺育を行っている様子などを紹介した。そのほか、海の中道とうみたまごとしものせきの3館が連携し瀬戸内海西方海域スナメリ協議会を立ち上げ、砂浜に打ち上げられるスナメリの調査(ストランディング調査)を地域住民や漁業者を巻き込んだ取り組みなどを紹介した。
横浜八景島シーパラダイスの職員は「8年くらい前に東京湾で保護されたスナメリの新生児を飼育したことがあった。(現在は飼育展示していないが)東京湾にもスナメリは生息しているので近い将来に飼育することになるかもしれないのでシンポジウムに参加した」と話す。