「あのりふぐ」や「あのりさば」などのブランド魚の水揚げ港としても知られる安乗(あのり)漁港がある安乗地区に、400年以上続く人形浄瑠璃「安乗文楽・安乗人形芝居」の年に一度だけの公演が今年も9月15日・16日、安乗神社(志摩市阿児町安乗)境内で開催される。古来から続く伝統芸能の安乗文楽が見直されている。
豊臣秀吉に仕え水軍として活躍した九鬼嘉隆が1592年の文禄の役出兵の際に、同地の八幡宮(同神社)に海上安全と戦の勝利を祈願、朝鮮での合戦に勝利し同年8月15日にお礼参りに訪れ、村人に人形芝居を毎年行うことを許可したことが現在まで続く安乗文楽の始まりとされる。大正から昭和中期に一時途絶え、1951(昭和26)年に安乗人形芝居保存会が復活させ、後継者育成を目的に1978(昭和53)年、安乗中学校にクラブ活動の一環として「文楽クラブ」ができた。
8月23日・24日に伊勢志摩で開催された「第61回日本PTA全国研究大会」の初日、阿児アリーナ(志摩市阿児町)で行われた第9分科会のアトラクションとして安乗小学校4~6年の児童36人が人形劇「勧進帳」を披露し大会を盛り上げた。また10月23日~25日の期間伊勢志摩で開催予定の「第55回全国社会教育研究大会」では安乗中学校の文楽クラブが安乗文楽を披露。日本の伝統文化を継承する取り組みとして、その場を和ませるアトラクションとしてさまざまな団体から引っ張りだことなっている。
9月15日・16日の公演を見ようと同地に全国から宿泊を兼ねて訪れる。同地区の宿泊施設には来年の公演日に合わせて1年先の予約をする客もいるという。近年、アマチュアカメラマンの数も多くなり、いい場所で撮影しようと朝早くから並ぶカメラマンの姿も。
日本PTA全国研究大会に参加し「勧進帳」を観覧した人は「文楽はチームワークがとても大切だということが子どもたちの姿からよく分かる。練習も何度も行っているのでしょう」と感心する。「日本の伝統芸能が今、再認識されているのだと思う。何かほっとするステージで9月の公演も見てみたいと思った」とも。
9月15日=「勧進帳」(安乗小)、「鎌倉三代記~三浦之助母別れの段」(文楽クラブ)、「艶容女舞衣(あですがたおんなまい)~酒屋の段」(安乗人形保存会)。16日=「生写(いきうつし)朝顔話~大井川の段」「傾城(けいせい)阿波の鳴門~巡礼歌の段」「絵本太功記~尼ケ崎の段」(安乗人形保存会)。開演は両日とも18時30分~。