アメリカ合衆国特命全権大使のキャロライン・ケネディさんが4月16日、伊勢市を訪れ、伊勢神宮内宮(ないくう)でアメリカ寄贈のハナミズキの植樹を行った。植樹は伊勢市に縁(ゆかり)があり生涯、平和と協調を訴え続けた政治家・尾崎行雄が100年前に米国にサクラの苗木を贈ったことの返礼。
アメリカ合衆国特命全権大使のキャロライン・ケネディさん、ハナミズキ植樹
尾崎行雄(1858~1954年)は神奈川県相模原市津久井町(旧相模国津久井県又野村)生まれだが、1872(明治5)年からの約2年間を伊勢市(旧度会県山田)で過ごし、その後1890(同23)年の第1回総選挙から三重県選挙区(広域伊勢志摩圏内)より出馬し連続25回当選(国会議員歴63年)。1898(同31)年大隈重信内閣で40歳の若さで文部大臣に就任し、1903(同36)年~1912(大正元)年の期間は東京市長も務めた。クリーンな政治家を貫き、「民主政治」の実現、「世界連邦」の建設、「軍縮」「世界平和」を訴え続けた。咢堂(がくどう)は雅号。
尾崎の東京市長時代の1909(明治42)年、タカジアスターゼやアドレナリンを発明した高峰譲吉博士らの協力を得てサクラの苗木2000本を初めてワシントンに贈ったが、その時の苗木全てに害虫が見つかりあえなく焼却処分となったため、その後優良な苗木を最初から育成。1912年にサクラの苗木6000本をアメリカへ寄贈した(ワシントンとニューヨークにそれぞれ3000本)。
その返礼として1915(大正4)年、ウイリアム・ハワード・タフトアメリカ大統領から40本の白のハナミズキの苗木が贈られたが当時の木はほとんど枯れてしまったため、2年後の1917(同6)年にピンクと白のハナミズキが再び贈られた。
アメリカにサクラを贈ってから100周年となった2012年、アメリカ国務省、日米交流財団などにより「友好の木-ハナミズキ イニシアチブ」が発足され、日米の次の100年の友好を願って東日本大震災の被災地を含む日本全国各地へ3000本のハナミズキを贈ることを決定。今回の植樹はその一環として尾崎行雄を顕彰するNPO法人「咢堂香風(がくどうこうふう)」らが呼び掛け実現した。
寄贈されたハナミズキは計32本。その内の1本(品種=スターライト)が伊勢神宮内宮参集殿北側の神苑の一角に植えられた。植樹式には大使のほか、鈴木英敬三重県知事や鈴木健一伊勢市長、同NPOの土井孝子名誉顧問らが参加。そのほかに外宮(げくう)に1本(品種=同)、尾崎咢堂記念館(伊勢市川端町)に5本(品種=スターライト、ビーナス、コンステレーション、アパラチアン・スノウ、チェロキー・ブレーブ)、市内小学校など計7カ所に植樹される予定。
尾崎咢堂記念館の奥本謙造館長は「100年前に咢堂先生が日米の友好、世界平和を願って植えたサクラがこのような形で花を咲かせることになるのはとても素晴らしい。当館にも将来を見据えた若者たちや初心を取り戻そうとする政治家たちの入館が増えている。この機に、もう一度尾崎咢堂の思想に触れていただければ。当館の庭に植樹されたハナミズキも花を咲かせ満開を迎えようとしている」と話す。
この日大使は、ミキモト真珠島(鳥羽市鳥羽)真珠博物館や伊勢神宮外宮勾玉池のほとりにできたせんぐう館(伊勢市豊川町)なども見学、昨年遷宮によって新しくできたばかりの伊勢神宮両宮の御垣内参拝も行った。