真珠養殖盛んな英虞湾の中央に位置する賢島に本校を持つ広域通信制高校「代々木高校」(志摩市阿児町)の生徒が10月30日、天皇陛下をはじめ内外のVIPも多く宿泊する「志摩観光ホテル クラシック」(同)のメーンダイニング「ラ・メール」でディナーを取りながら「一流」について学んだ。
同校は、文部科学省の「学校設置基準」を大幅に譲歩できるようにした構造改革特区法により認可された高校。地域の不登校の生徒や高校を中途退学したがもう一度勉強したいという人などの受け皿となるとともに、伊勢志摩の豊富な自然やスポーツに適した環境を生かし、能動的な生徒たちに対して料理人を目指す「伊勢志摩料理人コース」やプロゴルファーを目指す「アスリートゴルフコース」など、全日制高校ではできないサポート体制を提供する(10月31日現在、全国84教室、160コース)。
校舎は賢島にあったホテルをそのまま活用しているため、教室は客室、講堂・ホールは宴会場をリフォーム、備品などもホテル仕様とユニークだが、教室の窓からは英虞湾や木々の緑が広がり、鳥のさえずりが聞こえてくるほど自然豊か。生徒たちは都会の騒がしさを離れて授業を受けることができる。
「一流」について学ぶ今回の企画は、学習指導要領に基づいた年間10時間以上(卒業までに30時間以上)学ぶ必要がある「特別活動」の一環。今回は同校と目と鼻の先にあり、日本を代表する「一流ホテル」で食事することについて、またテーブルマナーについて、名古屋教育支援センター・代々木高校名古屋丸の内サテライト教室(名古屋市)に通う1年生から3年生までの12人が学んだ。
同教室の理事長鈴木文代さんは、「一流」「一番」を知っている・経験していることがどれだけ大切かを生徒たちに説いた。鈴木さんは「このホテルは天皇陛下もお泊まりになる『一流』といわれるホテル。そこで食事を取ることは、必ず生徒たちの自信につながる。経験したことがない、知らないということは緊張したり、本来の自分が発揮できなかったりすることにつながってしまう。生徒たちに大きく羽ばたいて社会で活躍してほしいので」と愛情を注ぐ。
参加した生徒たちは、「緊張する」「ドキドキです」と最初は顔をこわばらせていたが、次第にリラックスした表情に。同ホテルの元総料理長・高橋忠之さんが1980年ごろ考案した伝統料理「伊勢海老クリームスープ」に舌鼓を打つと笑顔がはじけ、メーンディッシュのステーキが運ばれた時には堂々とした振る舞いに変化していた。
同ホテルは、開業1951(昭和26)年。同年の11月、昭和天皇が戦後の復興状況視察のため伊勢志摩まで巡幸され同ホテルに宿泊。昭和天皇は5回、今上天皇は1回(2001年)同ホテルを利用され、皇室関係者や海外の要人なども数多く利用。昨年亡くなった作家の山崎豊子さんはよく同ホテルの一室を借り執筆活動をしていたという。同ホテルを舞台にした山崎さんの作品「華麗なる一族」は、映画やドラマにもなった。2008年には同敷地内に全室スイートルームの「志摩観光ホテルベイスイート」を開業。