樹齢350年以上志摩の一本桜「岩戸桜」の花が3月28日、ほぼ満開になった。今年も純白の花が、志摩の人里離れた山の奥地に人々を集めている。
アマテラスがスサノオの悪事に怒り、天の岩戸に引きこもって国中が真っ暗闇になるという神話「岩戸伝説」に登場する「天の岩戸(あまのいわと)」(志摩市磯部町)が近くにあり、その参道入り口で、威風堂々と枝木を伸ばしているのが「岩戸桜」だ。
岩戸桜の満開は例年4月の初旬だが、今年は3月26日の時点で一分咲きだったものが、連日の春の陽気で一気に花開いた。
岩戸桜は、江戸中期に書かれた当時の観光ガイドブック「伊勢参宮名所図会」(1797年)巻五に「家建(やたて)の茶屋」として桜の挿絵が描かれ紹介されている。同地は志摩から伊勢神宮への旧街道で、品種がオオシマザクラであることから、江戸初期に参詣者によって種(もしくは苗)が運ばれ植えられたと推定される。
日本で最初の力士とされる神=アメノタヂカラオは岩戸伝説で岩屋を覆う岩の扉をその力で長野県の戸隠まで投げたとされる。アマテラスを岩屋から外へ出すと太陽の光が戻り、国中が再び明るくなった。偶然にも3月29日は、伊勢神宮奉納相撲が行われ力士たちが伊勢に集結。古事記にも登場しアメノタヂカラオを祭る佐那神社(多気郡多気町)では3月13日に行われた遷座を奉祝する「式年遷座奉祝祭」が行われている。