伊勢神宮で使用する米を作る神宮神田(伊勢市楠部町)で4月6日、1年の耕作始めに当たる「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」が行われた。
同祭は、神田に「忌種(ゆだね)」と呼ぶ清浄なもみ種をまく祭典で毎年4月の初めに行われている。この日は鷹司尚武大宮司ら神職と地元楠部町の人々が見守る中、古式にのっとり行われた。
同祭はまず、田を耕す道具である「忌鍬(ゆくわ)」を作るところから始まる。神田奥の「忌鍬山」の麓にある山口祭場で山の神に、鍬がうまく出来上がるように祈る「山口祭(やまぐちさい)」を行い、その後、山頂まで登り木の神に鍬の柄となる木を切ることの許しを請う「木本祭(このもとさい)」を行い、童男(どうなん)が櫟樫(いちいがし)の木を切って鍬の柄を作る。鍬が完成すると禰宜(ねぎ)以下の奉仕員は、「まさきのかづら」と呼ぶテイカカヅラのつる草を円形に編んで烏帽子(えぼし)に飾り下山し、神田の祭場に整列、神田下種祭に臨む。
今年の童男には、地元楠部町出身五十鈴中学1年生の豊田啓太さんが選ばれた。
神田下種祭では、祭場に神饌(しんせん)を供え田の神を祭り、続いて神田を管理する作長の山口剛さんが、忌鍬を受け取り、鍬を振り下ろす所作を行う。その後白装束の奉仕員2人が水田に入り、もみ種をまく。その時、古来より歌い継がれている御田歌(みたうた)「天鍬(あめくわ)や 真佐岐(まさき)の蔓(かづら) 笠にきて 御田(みた)うちまつる 春の宮人(みやびと)」を唱和する。
神宮神田の総面積は約10ヘクタール、神田の作付面積は約3ヘクタール。神田には神宮の祭典で使う新米のほか餅や酒の原料用として、チヨニシキ、イセヒカリなどのうるち米とアユミモチ、カグラモチなどのもち米を作付けする。5月9日には「神田御田植初(おたうえはじめ)」が行われる。