適当な風が吹き、適当な雨が降るよう祈願する「風日祈祭(かざひのみさい)」が5月14日、遷宮を終えて新しくなった伊勢神宮内宮(ないくう)の「風日祈宮(かざひのみのみや)」と外宮(げくう)の「風宮(かぜのみや)」を中心に125社全てで行われた。
【その他の画像】神様の衣替えともいわれる絹と麻と、針と糸を供える祭典「神御衣祭」
風日祈宮・風宮の祭神は、イザナギとイザナミの間に生まれた級長津彦命(しなつひこのみこと)と級長戸辺命(しなとべのみこと)。風の神として知られ、鎌倉時代、元寇(1274年文永の役、1281年弘安の役)の時に神風を吹かせ国難を救ったとされ、1293年に別宮に昇格した。東日本大震災発生時、「福島第一原子力発電所からの放射能汚染を避けるように。風が内陸部に吹かないように」と多くの人が風の神様への祈りをささげた。その結果、最善が尽くされ「再び国難を救った」といわれている。「神風(かむかぜ)の」は伊勢にかかる枕詞(まくらことば)。毎年5月14日と8月4日に執り行われている。
同祭は、全国で稲作が始まり雨風の災害なく農作物が順調に成長するように五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈願するため、伊勢神宮の125社全ての神様に雨風を凌(しの)ぐ「蓑(みの)」と「笠(かさ)」を祭る。8月の同祭では稲も実り、順調に生育し収穫を残すのみとなっていることから蓑・笠は祭らず、台風の直撃など風雨による災害がないように、「悪風(あしきかぜ)荒水(あらきみず)に相(あ)はせ給(たま)わず」と祝詞を奏上する。
同日12時、天照大神(あまてらすおおみかみ)に「和妙(にぎたえ)」と呼ぶ絹と「荒妙(あらたえ)」と呼ぶ麻と、針と糸を供える祭典「神御衣祭(かんみそさい)」が正宮と荒祭宮で執り行われた。和妙と荒妙は5月1日から13日までの期間に「神服織機殿神社(かんはとりはたどのじんじゃ)」(松阪市大垣内町)と「神麻続機殿神社(かんおみはたどのじんじゃ)」(同井口中町)で織子たちによってそれぞれ織られたもの。
同15日から伊勢神宮の警備などを担当する「衛士(えし)」の制服が黒の冬服からグレーの夏服に変わる。