写真家のKankan(カンカン)さんが10月8日、広域伊勢志摩圏内最高峰の朝熊岳(あさまだけ)山頂で上昇気流に乗って伊勢湾を横断するタカ約100羽を観察した。
9月から10月にかけて、日本での子育てを終えたタカが親子で南方を目指して飛んでいくその様子を朝熊岳山頂近くで観察することができる。上昇気流をとらえてサークルを描きながら高度を確保する様子が柱のように見えることから「鷹柱(たかばしら)」と呼ぶ。この地方では秋晴れの日に多くの鷹柱を観察することができる。
東から西を目指す「タカの渡り」のルートは多くあるが、太平洋側では愛知県の伊良湖岬が有名。半島が海に向かって細くなっているため、数多くのタカが集中する。
伊勢神宮や伊勢志摩の自然を撮影し続けるカンカンさんは「伊良湖を飛び立ったタカは、神島や答志島を経由し鳥羽から朝熊岳の上昇気流をとらえ、天高く昇っていく。上昇した後はグライダーのように滑空し、なるべく羽ばたかず体力を温存することで、長距離の『渡り』に耐えていく。この日7時40分~14時20分の間に確認できたタカの数は約100羽(サシバ70羽以上、ハチクマ5羽、ミサゴ2羽、ツミ1羽、ノスリ5羽)。30羽以上の鷹柱も見ることができた」と説明する。
朝熊岳の主役はサシバ。紀伊半島から淡路島、四国、九州に抜け、宮崎県金御岳(かねみだけ)から屋久島、南西諸島、沖縄を通るルートが知られている。ハチクマは、瀬戸内から九州・福岡長崎を通り、そのまま大陸へと向かうルートが多い。ノスリやミサゴなどは、日本国内に留まる個体も多い。
カンカンさんは「多くの個体は朝熊岳を通り伊勢神宮内宮(ないくう)上空や鼓ヶ岳(つつみがたけ)でさらに上昇気流をつかまえ、西へと渡っていく。神宮上空では、非常に高い高度を維持しているため、肉眼ではほとんどわからないが、その様子を見ているとタカたちがまるで、天照大御神(あまてらすおおみかみ)さまに、日本を離れる挨拶をしているようにも思え愛しい気持ちになる」とも。