伊勢神宮で執り行われる年間1600余りの祭典の中で最も重要とされる「神嘗祭(かんなめさい)」が10月15日から、正宮、別宮、摂社、末社125社で執り行われている。25日まで。
五穀豊穣(ほうじょう)、国家繁栄、世界平和を願う「神嘗祭」は、今年の初穂(新穀)を神にささげ感謝する祭典。「神嘗正月」「神宮の正月」とも呼ばれ、かつては西暦の10月17日を「大祭日」として国民の休日と定めていたが、1948(昭和23)年7月20日施行の「国民の祝日に関する法律」から休日ではなくなった。もともとは日本国中に新穀が出そろう「太陰暦」(月の満ち欠けを元にした旧暦)の9月17日を神嘗祭と定め、祭日として全国民が祝っていた。
今年の10月1日は新月で旧暦の9月1日と重なったため10月15日は月齢15、16日は月齢16の満月になった。江戸時代まで月明かりに照らされながら行っていたという神嘗祭が今年、1951(昭和26)年以来の65年ぶりに再現された。
祭典は15日、まず内宮(ないくう)にて17時から無事に祭典が行われるようにと「興玉神祭(おきたましんさい)」、神職が祭典奉仕をしてもいいかどうかを占う「御卜(みうら)」を行う。同日外宮(げくう)で22時から「由貴夕大御饌祭(ゆきのゆうべのおおみけさい)」、16日2時から「由貴朝大御饌祭(ゆきのあしたのおおみけさい)」、12時から「奉幣(ほうへい)」、18時から「御神楽(みかぐら)」。続いて16日の22時から内宮でも同様に祭典が執り行われた。
「由貴」とは、この上なく貴いという意味で、「由貴夕大御饌」「由貴朝大御饌」は、アワビや伊勢エビなど約30品目も並ぶ夕食と朝食の「豪華な食事」のこと。「奉幣」は勅使により天皇陛下からの幣帛(へいはく)を奉納すること。
神宮司庁広報担当の西本俊一朗さんは「明治の初めまでは旧暦の9月17日に行われていた神嘗祭が今年は同じ日に執り行われた。満月は物質的な明るさだけでなく、目には見えない不思議なエネルギーが満ちあふれる時と考えられていた。65年ぶりに古代さながらのお祭りが執り行われたことに意味深さを感じる」と話す。
1995年に「夢見る少女じゃいられない」でデビューし、近年は全国の神社などを巡り「神結び 日本の聖地をめぐる旅」「縁結び 神様が結ぶ赤い糸」「太陽と月の結び」などを出版する歌手の相川七瀬さんは、16日の外宮「奉幣」と内宮「由貴夕大御饌祭」を奉拝。「このようなお祭りが千何百年以上も執り行われていることにただただ感謝。祭典の様子を近くで見せていただき、神職さんの一つ一つの所作どれをとってもとても丁寧であることに感銘を受けた。私もコンサートやそのほかの行動をもっと丁寧にしようと気付かせていただいた」(相川さん)。