志摩市にある「天の岩戸(あまのいわと)」(志摩市磯部町)の近くで毎年、威風堂々と枝木を伸ばす樹齢360年以上のオオシマザクラの一本桜「岩戸桜」に3月24日、純白の花が二輪咲いた。
アマテラスがスサノオの悪事を憂い、天の岩戸に引きこもって国中が真っ暗闇になるという神話「岩戸伝説」。その事態を打破しようと神々が相談し合い、オモイカネがアイデアを出し、アメノウズメが岩戸の前で踊る。ほかの神々が大笑いし楽しく盛り上がるとアマテラスが不思議に思い岩戸から顔を出す。その時イシコリドメが作った八咫鏡(やたのかがみ)をアメノコヤネとフトダマがアマテラスに差し出し鏡に映った自分に驚いた瞬間、アメノタヂカラオが岩戸を引き開け岩屋から出す。その舞台として知られる「天の岩戸」は全国各地に残る。伊勢志摩だけでも最低3カ所ある。
人里離れた場所にある「天の岩戸」は、伊勢神宮の森で守られた山裾にあり、そこから流れる水は名水百選(1985年)に選ばれ、昨年「名水サミット」が同市内で開催された。「ミキモトパール」を世界ブランドに育て「真珠王」となった御木本幸吉は、「天の岩戸」への参拝を欠かさなかった。
「岩戸桜」は、江戸中期に書かれた当時の観光ガイドブック「伊勢参宮名所図会」(1797年)巻五の「家建(やたて)の茶屋」の挿絵の中にも描かれ、樹齢360年以上といわれている。品種はオオシマザクラで純白の花と同時に緑の若葉を伴って咲き、さらに雄しべが花弁のように変化し旗状になる珍しい「ハタザクラ」でもある。
24日時点では二輪の花が咲いていたが、つぼみは全ての枝に付き大きく膨らんでいる。天気が良ければ月末ごろには満開になる。4月2日には、「岩戸桜」の前で恵利原早餅つき保存会(同)による早餅つきと「天の岩戸」から湧き出る名水を使いたてる抹茶の振る舞い「桜と餅と名水を楽しむ会」、写真展「前恵利原区長・前橋幸美遺作展」が行われる。早餅つきは11時~、12時~、13時~、14時~の計4回を予定。
恵利原早餅つき保存会メンバーで、伊勢神宮別宮「伊雑宮(いざわのみや)」(同)の日本三大御田植祭・国の重要無形民俗文化財に指定されている「磯部の御神田(おみた)」のプロデューサー的役割の師匠を務める谷崎豊さんは「樹齢360年以上のオオシマザクラが満開になると圧巻。早餅つきを行うので当日飛び入り参加して、一緒について、つきたての餅を食べていただければ」と呼び掛ける。