伊勢志摩国立公園協会の初代会長を務めた石原円吉(1877~1973)さんが「伊勢志摩を桜いっぱいにしよう」と植樹した桜「円吉ざくら」をテーマにした曲「円吉ざくらの夢」が完成し4月5日、おかげ横丁(伊勢市宇治中之切町)大黒ホールで発表会が行われた。
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真珠王として知られる御木本幸吉(1858~1954)さんとともに伊勢志摩国立公園の指定に尽力した石原さんは、志摩市志摩町和具出身。海の博物館(鳥羽市浦村町)の館長の実父。ヨウド生産、貝ボタンや魚介缶詰めなど水産加工などを事業化し成功させ、水産業の振興に力を注いだ。
「円吉ざくら」は、石原さんが私財を投じて生前に植えた1万本近くの桜。ほとんどがソメイヨシノで、60年近くが経過し寿命も近づいている。枯木ながら今年もたくさんの花を咲かせて人々の目を楽しませた。
音楽の制作発表会は、伊勢文化舎(同船江)代表の中村賢一さんらが「円吉ざくら」のことを後世に語りつなごうと企画。作詞は南伊勢町出身の詩人・下社裕基さん、作曲は明和町出身の音楽家・長岡成貢さん、歌は伊勢市出身のオペラ歌手・廣めぐみさんが担当した。
下社さんは「中村さんから円吉ざくらのことを聞き、南伊勢町の旧五ヶ所小学校の桜に手を触れた瞬間に歌詞が出てきた。まさか僕が作った詩に音楽がつくとは」と話す。長岡さんは「1年前に中村さんから下社さんの詩を見せていただいていた。今年2月1日そろそろ桜の季節だなと思った時に円吉ざくらのことを思い出したら一気に曲ができた」と説明する。
中村さんは「1946(昭和21)年11月20日に伊勢志摩国立公園が制定され、一昨年に70周年を迎えた。50周年の時には桜の植樹もしたが、70周年の時には植樹を大々的にはしなかった。やがて今植えられている円吉ざくらも寿命を迎えるから、まずは円吉さんの思いを音楽に乗せて語りつなぐことができればと思った。近い将来CD化していくことができれば」と意欲を見せる。