二見興玉神社(伊勢市二見町江)の夫婦(めおと)岩の沖合で5月21日、海中のアマモを刈り取る特殊神事「藻刈神事(もかりしんじ)」が行われた。
藻刈神事とは、夫婦岩の沖合約770メートル先の海中に鎮座する猿田彦大神ゆかりの興玉神石(おきたましんせき)に生えるアマモを刈り取る神事で、刈り取ったアマモを天日に干し、「無垢塩草(むくしおくさ)」として同神社のおはらい時に使う「祓具(はらいのぐ)」やお守り「無垢塩草」(200円)にする。アマモは、日本の沿岸部に分布する海草で近年、「海水の浄化」や「海のゆりかご」として増殖し重要性が見直されている。
周囲約850メートル、高さ約7.5メートルの大きさの興玉神石は、1854(安政元)年12月23・24日(旧暦11月3・4日)に発生した安政の大地震「東海・南海地震」(32時間後に連続発生、推定M8.4)で、海の中に沈んだといわれている。地元漁師らに聞くと、毎年この時期になると興玉神石に生えた黒いアマモで海が真っ黒に見えるという。
祭典は、金子清郎宮司と2人の神職と巫女(みこ)がサカキ・旗を立て、しめ縄を張り巡らせた和船に乗り、興玉神石のある海上を3周し、2拝2拍手1拝の後、神酒、御饌(みけ)を海中にささげ、アマモを手鎌で刈り取る。毎年5月21日に行われる。
風もなく波も穏やかなこの日、金子宮司が海中に約2メートルの鎌を入れると、黒いアマモが鎌の先端にたくさん巻き付き刈り取ることができた。
同神社では毎年、夏至の日に夫婦岩の前の海岸でみそぎを行う「夏至祭」が行われる。今年は6月21日。夏至の日には大しめ縄で結ばれた男岩と女岩の夫婦岩の真ん中から朝日と富士山が重なって現れる。