二見興玉神社(伊勢市二見町)の境内社「竜宮社」で6月28日、津波の教訓を後世に伝える祭典「郷中施(ごじゅうせ)」が執り行われた。
旧暦の5月15日に毎年行われる「郷中施」は、1792年5月15日にこの地区を大津波が襲い、民家約20戸が流されるなど大きな被害を受け、同神社の氏子らが隣人同士助け合い施し合って水難を克服したことから、過去の大災害の教訓をいつまでも忘れないように、犠牲者の供養と再び災害が起こらないよう祈るもの。綿津見大神(わたつみのおおかみ)を祭る竜宮社の例祭でもある。
祭典では、「天地(あめつち)の 神にぞ祈る朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を」の昭和天皇の御製に合わせてみこが舞う「浦安の舞」が奉納された。
祭典終了後、宮司たちは同神社前の竜宮浜に移動し、2人のみこが「キュウリ(野菜)」「ナス(同)」「ミル(海草)」「マツナ(海浜性植物)」の供物を木舟に載せて膝まで海に漬かり海に流す儀式が行われた。
供物には、子どもから大人まで理解できるように語呂合わせで「(大津波を)急に(キュウリ)、見る(ミル)な(ナス)、待つな(マツナ)」の意味を掛けている。
同神社に隣接し水族館や商業施設を運営する伊勢夫婦岩パラダイス(同)の中沢宏之さんは「いつまでも津波の教訓をこのような形で忘れないようにしているところはとても素晴らしい。当社もちょうど3日前に避難訓練を行ったばかりで先人たちの教訓を生かすことはとても大切なことだと改めて認識した。避難場所である大江寺(同)まで健常者の足で5分掛かる。大勢のお客さまをどう誘導するかもその時の判断がとても大切」と気を引き締める。