志摩市と千葉県銚子市、静岡県御前崎市、島根県出雲市の4つの自治体の市長が一堂に会して11月10日・11日、「灯台ワールドサミット」が志摩市内で開かれた。
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同イベントは、1868(明治元)年11月1日に日本初の西洋式灯台となる「観音埼灯台」(神奈川県横須賀市)の建設が始まったその日を「灯台記念日」と定め、今年がちょうど150年になるのを記念したもの。
「登れる灯台」(参観灯台)を持つ全国の15市町の中で第1回目となった今回は「安乗埼(あのりざき)灯台」(志摩市阿児町)と「大王埼灯台」(大王町)の全国で唯一2つの参観灯台を持つ志摩市が音頭を取り、各市町に呼び掛け、「犬吠埼灯台」(千葉県銚子市)、「御前埼灯台」(静岡県御前崎市)、「出雲日御碕(いずもひのみさき)灯台」(島根県出雲市)のある4つの自治体が参加した。
講演会で、日本近代建築史に詳しい東京工業大学名誉教授の藤岡洋保さんは、歴史的建築物としての価値やその土地にある資材の調達・建設場所などを考察すると多くの困難を乗り越えて作られたものであることが興味深く、また歴史の中で灯台の存在が重要であったことなど、様々な文化的価値を見出すことができると説明。灯台研究の第一人者でフランス海洋博物館のヴィンセント・ギグエノー(Vincent Guigueno)さんは、フランス式灯台とフランスの灯台観光の現状について、神島で灯台守をしていた経歴もある灯台技術官、第4管区海上保安本部名古屋港海上交通センターの藤島充良さんは、伊勢志摩にある灯台について詳しく説明、出雲日御碕灯台の光源が壊れた時に大王埼灯台の光源を持って行ったエピソードなどを披露した。
灯台専門フリーペーパー「灯台どうだい?」編集長の不動まゆうさんは、役割を終えた灯台がホテルとして人気を集めている事例などを紹介。夜明けと共に灯台の光が落ちるタイミングがとても素敵で見て欲しい。「灯台が1日の役割を終えて目を閉じる瞬間がいとおしい。思わずおやすみなさいと言ってしまう…」と表現し、「インスタ映えする灯台とキスしてハグする方法」を伝授するなど灯台の魅力を「灯台女子」ならではの視点で訴えた。
三重大学名誉教授の渡邉明さんをコーディネーターに迎えたパネルディスカッションでは、「地域資源としての灯台を使った地域活性化策を考える」というテーマで話し合い、「灯台が観光資源と成り得ることを共通認識として理解した上で、まずは4つの市の地域資源を横に結びつけて『1+1=犬(見たことないもの)』のような常識では考えられないものを設計できる創発効果を実現できれば」とまとめた。
その後、安乗埼灯台のある安乗岬園地(同)で交流会、翌日は大王埼灯台周辺を巡るエクスカーションが行われ、波切に移住した芸術家のAIさんによるライブペインティングなどもあった。参加者は改めて観光資源として有効な灯台の魅力を再認識していた。来年の「灯台ワールドサミット」は、「犬吠埼灯台」のある銚子市での開催が決まった。