天皇陛下が退位することを皇祖神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)に奉告(ほうこく)するための臨時祭「退位及びその期日奉告祭」が3月15日、伊勢神宮の外宮(げくう)と内宮(ないくう)で行われた。
臨時祭は、外宮・豊受大神宮(とようけだいじんぐう)で神饌(しんせん)を奉納する「大御饌(おおみけ)」が早朝4時から、天皇陛下から送られた5色の絹や数種の織物「幣帛(へいはく)」を奉納する「奉幣(ほうへい)」が7時から、同様に内宮・皇大神宮(こうたいじんぐう)で11時から「大御饌」、14時から「奉幣」が、それぞれ執り行われ、両宮に天皇陛下の退位とその期日を奉告した。
「奉幣の儀」では、「幣帛」の入った辛櫃(からひつ)の後を黒の平安衣装をまとった天皇陛下の命を伝える使者「勅使」が続き、緋(ひ)色の浅沓(あさぐつ)、白衣・緋袴(ひばかま)の装束の黒田清子祭主、小松揮世久(きよひさ)神宮大宮司らが第二鳥居前でおはらいを受けると、そのまま玉砂利を踏みしめ参進の列を作って正宮(しょうぐう)まで進んだ。
天皇皇后両陛下の長女・黒田さんが祭主を務める伊勢神宮は、皇祖神・天照大御神を祭り、国民の総氏神とされ、垂仁天皇26年に鎮座。2000年以上前に、第11代垂仁天皇の第4皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)が、天照大御神を祭る地を探し求めて伊勢にたどり着き創建したとされる。倭姫命は、後に神嘗祭(かんなめさい)などの祭典の期日や祭り方についても定めた。
神宮の広報を担当する音羽悟さんは「退位されるという重要なことを皇祖を祭る大神宮に奉告するのは昔から朝廷の役目だった。非常に重い役目なので今回は勅使が参向され、『五大祭』の一つ『祈年祭(きねんさい)』に準ずる祭典に則った。今回の臨時祭は創建以来のいまだかつて無い初めての祭典」と説明する。