伊勢神宮内宮(ないくう)別宮の「風日祈宮(かざひのみのみや)」と外宮(げくう)の「風宮(かぜのみや)」を中心とする伊勢神宮で5月14日、「風日祈祭(かざひのみさい)」が執り行われた。
適度な雨と風をもたらすようにと五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する同祭は、雨風をしのぐ「蓑(みの)」と「笠(かさ)」を伊勢神宮125社全てに奉納する。毎年5月14日と8月4日の年2回行われる。
この日、外宮で5時から、内宮で9時から行われた同祭。内宮では晴儀(せいぎ、晴天時に行う祭典)での祭典準備が進められていたが、祭典が始まる15分前に雨が降り出し、奉仕員が慌てて雨儀(うぎ、雨天時に行う祭典)に切り替え五丈殿にからひつを移動させた。祭典の始まりを知らせる報鼓(ほうこ)の音とともに、和傘を差した神職の列が現れ、ぬれた参道に玉砂利を踏みしめる音が響き渡った。
神風を起こし日本を救ったとされる同宮は風の神様として知られ、祭神はイザナギとイザナミの間に生まれた級長津彦命(しなつひこのみこと)と級長戸辺命(しなとべのみこと)。鎌倉時代、蒙古襲来・元寇(げんこう、1274年文永の役、1281年弘安の役)の時に2度の神風を吹かせて国難を救ったとされ、その功績から1293年に末社格の「神社」から「別宮」に昇格した。「神風の」は伊勢に掛かる枕詞(まくらことば)。
神宮司庁広報課長の音羽悟さんは「主祭神の級長津彦命、級長戸辺命の『級長(しな)』とは息、息吹の意味を持ち、神風と同じ意味を持つ。奈良時代から平安時代初期までは7月からの約2カ月間、毎日祈りをささげていた。今は行っていないがカシワの葉を五十鈴川に流して占う『柏(かしわ)流し神事』で豊作になるかどうかを占っていた時期もある」と説明する。
この日は、神様に「和妙(にぎたえ)」(絹)と「荒妙(あらたえ)」(麻)と針と糸を奉納する「神御衣祭(かんみそさい)」も執り行われた。
「神服織機殿(かんはとりはたどの)神社」(松阪市大垣内町)と「神麻続機殿(かんおみはたどの)神社」(井口中町)で5月1日から13日までの期間にそれぞれ織られた絹と麻を奉納する神御衣祭は、伊勢神宮内宮(ないくう)の「正宮(しょうぐう)」と「荒祭宮(あらまつりのみや)」でのみ行われ、毎年5月と10月の14日に行われる。