伊勢市出身の写真家・中野晴生さんが11月1日、写真集「伊勢神宮」(冨山房インターナショナル)を出版した。
実家が伊勢神宮外宮(げくう)に神饌(しんせん)を納める3代続く鮮魚商「中浅商店」だったことから、幼少の頃は外宮が遊び場だったという中野さん。18歳でカメラマンになることを決意し、大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ大阪校)に入学。在学中に東アフリカを旅しながら写真撮影する仕事を引き受け、同校を中退。約1年半の撮影取材の後、ヨーロッパ、中南米を約5年間撮影。帰国後、フリーカメラマンとして独立し、伊勢神宮をはじめ全国の神社、仏閣などを取り続けている。「週刊新潮」での3年間の連載をまとめた写真集「湖沼の伝説」(新潮社)を2000(平成12)年に出版。
同書には、内宮(ないくう)、宇治橋、前神宮祭主の池田厚子さんや現神宮祭主の黒田清子さんの祭典奉仕の様子や神嘗祭、式年遷宮などこれまで中野さんが撮りためた写真155点を収めた。伊勢神宮崇敬会理事長で前神宮少宮司の高城治延さんが推薦文を寄せ、伊勢神宮主事・広報室広報課長の音羽悟さんが神宮式年遷宮の歴史的変遷についての解説を、文筆家の千種清美さんが写真についての説明を、書家の柏木白光(かしわぎびゃっこう)さんが題字を、それぞれ担当した。
中野さんの母親・てる子さんが「(跡取り息子の)あなたが生まれて私の仕事は終わったと思っていたのに、家業を継がないでカメラマンになって、神宮さんに申し訳ない」と死ぬまでずっと言っていたと打ち明ける中野さん。
中野さんは「この写真集が完成して(母が心残りにしていた)神宮さんにご奉仕することについて、少しでもお役に立てたのではと思い、完成してすぐ母の祭壇に手を合わせた。『伊勢神宮』の写真集を出して、母親に報告したいとずっと思い続けていた。自分でも出来上がりを見て満足のいくものになり少しは親孝行ができたかなと思った」と話す。
中野さんは「伊勢神宮の神苑に立ち、心を空っぽにして刻々と変わる風景に身を委ねていると、ふと自然に反応し共鳴してシャッターを押す瞬間が訪れる。『見てごらん、残しておきなさい』とどこからか声が聞こえてくる。そんな風に記録した瞬間を一冊の本にまとめさせていただいた。神宮に関わる万物万人に感謝し、撮影させていただけることを天命と思い、これからも精進していきたい」とも。
出雲大社(島根県出雲市)の神殿や神在祭、平成の大遷宮などの写真145点を収録した「出雲大社」(同)は5月24日に出版。「伊勢神宮」と同じ三木和彦さんの装丁デザイン。
現在、中野さんは、「古代オリエント博物館」(東京都豊島区)にて、写真展「祈りの聖地・エルサレム」を開催中(来年1月13日まで)。
価格は「伊勢神宮」(8,800円)、「出雲大社」(7,480円)。