今年3月に閉館した志摩マリンランド(志摩市阿児町)で飼育展示していた淡水魚「ネコギギ」が10月23日、三重県立水産高校(同市志摩町)水産資源科アクアデザインコースの生徒たちに飼育管理が任され、同校の水槽に移された。
【その他の画像】三重県立水産高校生徒が国の天然記念物「ネコギギ」を飼育
ナマズ目ギギ科の淡水魚「ネコギギ」は、伊勢湾および三河湾に流入する清流の中・上流部にのみ生息する日本固有の淡水魚で、ギギ科の中でも第三紀中新世(約2000年前)に種分化したと考えられる学術上も貴重な生き物として、1977(昭和52)年7月に国の天然記念物の指定を受けた。近年水質汚染やダム建設などが原因で生息数が減少し、環境省のレッドデータブックにおいて絶滅危惧IB類に指定されている。体長は10センチ前後、夜行性で昼間は岩のすき間などに隠れている。
員弁川水系(いなべ市)のネコギギの生態調査をしたところ、1980年代には数百個体以上いたものが、1990(平成2)年9月の台風以降激減したことが判明。三重県教育委員会は、種の保全を図るため飼育下での増殖と将来増殖個体の野外放流を目的に、2003(平成15)年同館にネコギギの増殖・研究を依頼した。同館は、当時難しかったネコギギの増殖を3年掛かりで成功させ、その増殖方法を基に、いなべ市は「員弁川水系天然記念物ネコギギ保護増殖事業」として継続、これまで第5世代目が誕生させ、飼育下で生まれた1800匹以上のネコギギを放流する。
同校と同館は2016(平成28)年から提携し、同館内の「淡水魚・希少魚コーナー」に展示スペース「高校生水族館」を設置。高校生たちは水槽管理を任され、水槽の清掃などを担当していた。同館は高校生に飼育・展示方法などを指導するなどして実践の場を提供してきた。ネコギギは「高校生水族館」内でも飼育展示していた。
この日、同校といなべ市教育委員会は「天然記念物『ネコギギ』飼育に関する協定書」を締結。その後、同館で飼育展示していたネコギギの雌3匹といなべ市で生まれた雄3匹計6匹(共に2019年生まれ)それぞれ1匹ずつを同校の水槽に移した。
生徒たちは、いなべ市教育委員会生涯学習課課長補佐の後藤健宏さんから「志摩マリンランドの繁殖成功がなければ、今の活動は続いていないこと」など員弁川水系のネコギギの現状や活動について、同館館長の里中知之さんから、雌雄の見分け方や飼育方法などについて説明を受け、熱心にメモを取っていた。今後、生徒たちは天然記念物の飼育と人工繁殖に挑戦し、最終的に員弁川水系への放流を目指す。
同校2年生の九渡春葉(くどかずは)さんは「ネコギギの飼育は貴重な経験になる。責任を持って取り組みたい」と話す。