三重大学(津市栗真町)が9月14日、鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)で飼育展示しているスナメリが仲間のスナメリと音でコミュニケーションを取っていることを調査した研究成果を発表した。
同発表は、同大大学院生物資源科学研究科博士後期課程2年の寺田知功さんが同研究科の森阪匡通准教授と吉岡基教授指導の下、同水族館と連携し、飼育下のスナメリがコミュニケーションや威嚇などを行う時に発する音「鳴音(めいおん)」を使っているかどうかを調査したもので、同研究は8月8日付けの動物行動学に関する国際誌「Journal of Ethology」に掲載された。
寺田さんは、同水族館の6頭のスナメリが鳴音を出すのかどうかについて調査。ほかの個体と違うプールに1頭だけになったスナメリが、「パケット音」と名付けた特別な音を出すこと、2頭以上でいる時はこの音が少ないこと。ほかのイルカの仲間でも出す「バーストパルス」というタイプの音は1頭の時は出さず、雄雌が2頭以上でいて繁殖行動を伴う仲良し行動をしている場合に多く出していることなどをデータから解析し、「パケット音」はお互いがどこにいるのかといった情報を伝え合うコンタクトコールの機能を持ち、「バーストパルス」は親和的な繁殖に関わる何らかの機能を持ち、この2つの鳴音を使ってコミュニケーションを取っている可能性が高いことを結論付けた。
森阪准教授は「スナメリは、コミュニケーションのための音として2種類以外に、まわりを探索する(エコーロケーション能力)ための音『クリックス』も出す。1頭だけの時に『パケット音』が増えることから『おーい、みんなどこ?ぼくはここにいるよ』といった感覚に近いコミュニケーションを取っているのではないかと考えられる。『バーストパルス』の音が『愛している』なのか、『逃げるな』という脅しなのか、そこまでは分からない。音についてハンドウイルカなどは分かっていることは多いが、スナメリは分からないことだらけ。今後も研究を続けて行きたい」と話す。
「スナメリの音声コミュニケーションの研究はまだ始まったばかり。ほかの水族館でも同じような鳴音を持つのか、どのように子イルカがこの音を出すようになるのか、野生のスナメリがどのくらいこの音を出しているのかといった調査も行っていく予定」とも。
同水族館によると、スナメリは、ペルシャ湾から日本沿岸にかけて分布する小型のハクジラの仲間。日本では瀬戸内海や伊勢湾などに多く見られる。ほかのイルカ類に比べ神経質で、飼育が難しいとされている。同水族館のスナメリの飼育記録は来年9月30日、60周年を迎える。