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三重県熊野灘沖で新種のイソギンチャク発見 ヤドカリの宿を増築する共生関係に

三重県熊野灘沖で新種のイソギンチャク発見 ヤドカリの宿を増築する共生関係に
(写真提供=東京大学大気海洋研究所附属国際・地域連携研究センター)

三重県熊野灘沖で新種のイソギンチャク発見 ヤドカリの宿を増築する共生関係に (写真提供=東京大学大気海洋研究所附属国際・地域連携研究センター)

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 東京大学大気海洋研究所(岩手県上閉伊郡大槌町)と三重大学(津市)、鳥羽水族館(鳥羽市)などで組織する研究チームが4月25日、熊野灘沖などで採集したヤドカリが住む貝殻の「宿」の上に共生し「宿」を増築するイソギンチャクが新種であると発表した。

【その他の画像】強い共生関係を持つヤドカリとイソギンチャク

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 研究チームは、東京大学大気海洋研究所附属国際・地域連携研究センター研究員の吉川晟弘さん、現・福山大学講師の泉貴人さん(研究当時、琉球大学理学部海洋自然科学科生物系日本学術振興会特別研究員)、鳥羽水族館飼育研究部学芸員の森滝丈也さん、三重大学大学院生物資源学研究科教授の木村妙子さん、千葉県立中央博物館分館海の博物館主任上席研究員の柳研介さんらで組織する。リーダーの吉川さんは三重大学生物資源学部を2015(平成27)年に卒業。在学中は志摩市などでアジ科の魚の研究を行っていた。

 研究は、熊野灘や静岡県駿河湾の水深 200~400メートルの深海底に生息するジンゴロウヤドカリが住む貝殻上に共生するイソギンチャクを採集し、個体観察やDNA解析などを行った結果、キンカライソギンチャク属であると識別し、これまで日本でヒメキンカライソギンチャクとして知られていたイソギンチャクが学術的に新種であることを突きとめた。そのほか、自身の分泌物で「宿」の貝殻を大きくさせていることや深海底に降り注ぐ有機物(マリンスノー)を効率よく摂餌できるように、口を上に向けた状態で貝殻上に付着している可能性が高いこと、ヤドカリが貝殻を引っ越す際、イソギンチャクを新しい貝殻へ移す行動をとること、ジンゴロウヤドカリ以外のヤドカリと共生する例が見当たらないことなどから、2つの種が強い共生関係にあることを発見した。

 吉川さんは「木村教授に、三重大学の演習船『勢水丸』での熊野灘の深海生物相調査に誘っていただいた時に見つけたイソギンチャクを新種として報告。特定の1種のヤドカリと共生し、かつその『宿』となる構造を『増築』することから、スタジオジブリの映画『ハウルの動く城』の原作となった小説『魔法使いハウルと火の悪魔』に登場する火の悪魔『カルシファー』に因んで『Stylobates calcifer(スタイロバテス カルシファー)』と命名、新種として登録した」と説明する。

 「面白いのは、『増築』は貝殻よりも柔らかく薄いので、『プレハブ』で増築したようなイメージの方がわかりやすいかも。深海という極限環境では、ヤドカリが成長する度に大きい貝殻を探して引っ越すことそのものが難しいと思うので、『増築』してくれることで引っ越しの回数を抑えられるメリットもあると思われる。さらに研究を重ねて生物の進化過程を明らかにしていければ」と話す。 

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