伊勢神宮の祭典に供えるコメを作る「神宮神田」(伊勢市楠部町)で4月4日、1年の耕作始めに当たる「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」が行われた。
同祭は、童男(どうなん)と神職らが、神田奥の「忌鍬(ゆぐわ)山」に入り、麓にある山口祭場で山の神に忌鍬がうまく出来上がるように祈る「山口祭」を行い、童男が忌鍬で山に入るための草を刈る所作を行う。その後、山頂まで登り木の神にくわの柄となる木を切ることの許しを請う「木本祭(このもとさい)」を行い、童男がイチイガシの木を切ってくわの柄を作る。くわが完成すると禰宜(ねぎ)以下の奉仕員は、「まさきのかづら」と呼ぶテイカカヅラのつる草を円形に編んで烏帽子(えぼし)に飾り下山する。
神田のそばに作られた祭場に神饌(しんせん)を供え、田の神を祭り、祝詞を上げると、続いて黄色の装束をまとった神宮技師・作長の山口剛さんが、完成したばかりのくわを持ち、左右正面に3回耕す所作を正面、西、東の計3回行う。続いて禰宜から作長に「忌種(ゆだね)」と呼ぶ清浄なコメの種が手渡され、作長はそれを白装束姿の作丁(さくてい)と呼ぶ奉仕人に振り分け、古来歌い継がれている御田歌(みたうた)「天鍬(あめくわ)や 真佐岐(まさき)のカヅラ 笠にきて 御田(みた)うちまわる 春の宮人」と唱和しながら作丁2人が神田に種をまく。
今年の童男には、四郷小学校6年の千秋季誠(すえなり)さんが選ばれた。久邇朝尊(くにあさたか)大宮司をはじめ、神職や地元関係者ら約60人が参列し、祭典を見守った。
神宮神田の総面積は約10ヘクタール、神田の作付面積は約3ヘクタール。祭典用水田の面積約862平方メートル。神田には神宮の祭典で使う新米のほか餅や酒の原料用として、うるち米やもち米を作付けする。育てられた早苗を基に、5月13日に「神田御田植初(おたうえはじめ)」が行われる。