桜咲く伊勢神宮の能舞台で行われた華道家元池坊による「献華祭(けんげさい)」が4月4日の開催で80回を数えた。
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毎年4月4日に池坊華道会(京都市中京区)が行う同祭は1948(昭和23)年から行われている。次期家元の池坊専好(せんこう)さんは「80年前は人々の気持ち的にも社会的にもお参りし、神さまに手を合わせるような時代ではなかった。そんな時に伊勢神宮から声がけいただいたのが献華祭始まりのきっかけだと聞いている。今、激動の時代の中で、皆さまが心穏やかに神様に手を合わせる。そういう気持ちと状況になるようにと、いつも確認し、願っている。神仏に花を供えることは生け花の原点」と話す。
この日は華道家元池坊青年部代表の池坊専宗(せんしゅう)さんが青竹を切っただけの筒の花器に白桃の花を生ける「献華の儀」を行い、参集殿に集まった約200人の関係者と参拝者が見守った。
専宗さんは「桃は邪気を払うといわれている。社会の平穏と静かな心を願って生けた。これまで機会がなく、献華を行うことが初めてだったが、その最初の献華が伊勢神宮であることにもとてもご縁を感じている。今ある命との対話を大事にし、手元にある桃と開かれた気持ちがいい伊勢神宮の空間で静かに生けることができた」と話す。「剣山は使わず枝で挟むように留めて500年前と同じようにして生けることができた」とも。
もともと「生け花」は、仏前への「供花」「祈りの花」が起源。紫雲山頂法寺(京都市中央区)「六角堂」を発祥として室町時代中期に誕生。池坊の「生け花」には、室町時代から続く最も古い様式の「立花(りっか)」、江戸時代に成立したシンプルな様式の「生花(しょうか)」、戦後に定着した型のない様式の「自由花(じゆうか)」の3つのスタイルがあり、献華祭では花そのものの持つ美しさをできるだけ自然のままに生ける「生花」で生ける。
「献華の儀」の後、一行は「生花」を神楽殿に奉納し、伊勢神宮への正式参拝を行った。
華道家元池坊中部三県連合会と三重県連合会による「伊勢神宮献華80回奉祝記念花展 中部三県連合花展 三重大会」が4月6日・7日、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市岩渕)で行われ、池坊専好さんによる生け花を含む335作品が並ぶ。開催時間は10時~16時。