伊勢神宮の専用水田「神宮神田(しんでん)」(伊勢市楠部町)で5月11日、「神田御田植初(しんでんおたうえはじめ)」が行われた。
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総面積は約10ヘクタールで、栽培面積は約3ヘクタールの神宮神田は、伊勢神宮の祭典で神饌(しんせん)として奉納される米や餅、神饌の中の酒などの原料として使ううるち米ともち米を栽培する。水は伊勢神宮内宮(ないくう)を流れる五十鈴川から引く。
同祭は鎌倉時代から行われていたとされ、現在は地元楠部町の「神宮神田御田植祭保存会」が継承。1971(昭和46)年3月17日に三重県の無形文化財の指定を受ける。
黄色の装束を着た神宮神田の責任者で神宮技師の山口剛作長(さくちょう)が3束の早苗を水田に投げ入れると、作丁(さくてい)と呼ぶ奉仕員2人がその早苗を3列植えた。その後、子持帷子(かたびら)に烏帽子(えぼし)、黄色のたすきをかけた男性10人と菅笠(すげがさ)に白衣、赤いたすきをかけた女性10人がはだしで横一列に交互に並び、笛や太鼓の調べを聞きながら早苗を手植えした。
ゆったりとした田楽の調べの中で田植えが行われている間、水田にはホウネンエビが水中を漂いながら動き、ニホンアマガエルが鳴き、交尾しながら水色のイトトンボが産卵のために留まる水草を求めて飛び回る。空では、三重県レッドデータブック2015で絶滅危惧I類に指定されるタカ目タカ科のハチクマが水田の真上で円を描いて田植えを見守っていた。
早苗を植え終わると、手に竹扇を持った男10人が水田の東西に整列し、「ヤア」とかけ声をかけ合いながらイナゴを払う動作を行った。水田の中では大黒と恵比寿の絵が描かれた大団扇(ごんばうちわ)を持った2人が「団扇合わせ」を行いながら3回回り、豊作を祈った。
6月24日には、伊勢神宮別宮「伊雑宮(いざわのみや)」(志摩市磯部町)で「御田植祭(おみた・おたうえさい)」が行われる。