日本の食文化を三重から世界に発信しようと活動する「三重伝味(でんみ)の会」(志摩市大王町)が6月7日、おかげ横丁「おかげ座ホール」(伊勢市宇治中之切町)で食文化についての勉強会を開いた。
「伝統的な味を生み出すいにしえの知恵に学び、本物の味とその背景にある食文化を守るとともに、未来への創造を見いだせる人づくりに貢献する」ことを目的に2019(平成31)年4月に発足した同会。6月4日には三重テラス(東京都中央区)で「東京伝味の会」が立ち上がった。
2016(平成28)年に志摩市の賢島で開催されたG7伊勢志摩サミットで、三重県産食材の「品質の良さ」が注目された。中でも、かつお節を生産する同会代表の天白幸明さんが社長を務める「まるてん」(志摩市大王町)は、世界の有名シェフらがカツオのいぶし小屋を見学するために同社を訪れ、世界中のメディアの取材を受けた。天白さんは「伝統的な手法を守り続け、素晴らしい商品を提供する生産者は三重にもたくさんいる。小さな事業所でもいいものを作っていれば世界に通じることを確信した。能動的な情報発信の大切さを感じ、当会を立ち上げた」と話す。
同会を立ち上げてすぐコロナ禍になったことで、計画していた勉強会や生産者を訪ねるガストロノミーツアーなどが実行できなかったが今回、1回目の勉強会として民俗情報工学研究家の井戸理恵子さんとFOOD NIPPON代表で八雲茶寮(東京都目黒区)総料理長の梅原陣之輔さんを講師に招いた。
来日中のフランス国家最優秀職人章(MOF・人間国宝)の称号を持つシェフ、ソニア・ビシェさんも急きょ登壇。「日本人の食材へのリスペクトに感動している。日本の食材の素晴らしさはそこにある」と話した。梅原さんは「背伸びしない、踊らされないこと。できることを自分たちができる範囲内でやること。ストーリー、ヒストリー、フィロソフィーをしっかりと伝え意識することが大切」と力説する。
8日・9日には「御食国(みけつくに)ガストロノミーツアー」を実施。創業350年の歴史をもつしょうゆメーカー「ミエマン 西村商店」(玉城町)や伊勢志摩サミットで首脳たちも食した南張(なんばり)メロンを栽培する「川口農園」(志摩市浜島町)などを巡った。
天白さんは「今回、井戸さんや梅原さんたちに、生産者を訪ねる御食国ガストロノミーツアーを体験してもらった。今後、東京伝味の会と連携してガストロノミーツアーを充実させ、生産者と対話し生産現場を見てもらい本物を知ってもらえるような取り組みを加速していければ。勉強会も春秋の年2回を目標に開いていきたい」と話す。