明和町在住で愛知県立大学看護学部(名古屋市守山区)教授の清水宣明さんが9月10日、災害時に保育園児らの命を守ろうと保育園との対策研究を重ねそれらをまとめた書籍「保育施設の災害対応ガイドブック」(中日新聞社)を出版した。
清水さんは1959(昭和34)年栃木県鹿沼市生まれ。山形大学理学部卒業後、千葉大学医学部生化学教室、国立がんセンター研究所ウイルス部で基礎医学を研究。世界初の成人T細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)の遺伝子構造の決定プロジェクトに参加、同時に山形大学理学部修士課程修了。1986(昭和61)年群馬大学医学部博士課程に進学し、エイズウイルス(後天性免疫不全症候群)の研究に取り組む。群馬大学医学部講師を経て、2013(平成25)年から現職。著書に「津波避難学:命が助かる行動の原則と地域ですすめる防災対策」(2016年、すぴか書房)、「斎の舞へ」(2006年、仮立舎)。愛知県立大学内に「地域災害弱者対策研究所」を開設し、所長を兼務。専門は感染制御学、災害危機管理学。新型コロナウイルス感染症のまん延時には多くのメディアで予防対策などを解説した。
同書は大規模災害が起こった時、子どもたちを守ために保育施設で働く人はどう行動すべきか、災害への必要な備えとは、保育現場での現実的な対応を分かりやすく解説。高齢者や障害者など社会的弱者全般の防災に応用が利く実践的な内容を6項目に分け、マニュアルを簡潔に作れるよう、災害対策カード、事前解決カードなどアクションカード作りの書式と実例を示すページも7項目目に載せた。
清水さんは「東日本大震災で『なぜ亡くなってしまったか』を2年半ほど詳しく調べてプロファイリングした。当時ある自治体が作っていた津波対策のハザードマップは30分後に津波襲来の想定に、1時間に4.8キロの速度で3キロ逃げなさいという非現実的なことが書いてあった」と話す。
清水さんは「春日井市の全保育園では災害対策マニュアルを作った。長久手市、みよし市でも全保育園で作成予定。今、愛知県や名古屋市の行政と共に現実的なマニュアルを作ろうと取り組んでいる。名古屋市全16区でも取り組んでいく。大津波による災害想定では、『指定避難所に逃げなさい』という意識が優先するが、実際にはそこに行くことができない人が多い。まず在宅避難を考え、それが無理なら安全に逃げることができるか、できるだけ動かないで済む方法を考え、あとは籠城戦。1週間分の食料や防寒対策などの準備をしっかりすること。逃げ出せばより安全になるとは限らない。むしろ危険にさらされる」と説く。
「保育園では予算的にも人的にも全く無理が利かない。一番は無理をさせない。自分たちの問題を明らかにすること。その問題を解決するための対策を自分たちで考えること。保育園での対策ができれば高齢者施設などどこでも通用できることが分かった。保育園での対策は特別なものだと思うかもしれないが、災害対策のグローバルスタンダード。脅すようなこと、怖がらせることは絶対してはいけない。実践配備の本。日本中の保育園で読んでいただきたい」と紹介する。
価格は1,540円。