志摩市内にある伊勢別宮「伊雑宮（いざわのみや）」（志摩市磯部町）で6月24日、御田植祭（おたうえさい）「伊雑宮御田植式」が行われた。

志摩市・伊雑宮の「御田植祭・おみた」

　白い衣装に赤いたすきがけの早乙女（さおとめ）と田道人（たちど）が苗場を3周半回って苗を取る。裸男たちが水田に入ると、「太一」と書かれた大きなうちわの「忌竹（いみだけ）・ごんばうちわ」を持ってぐるぐると回って田の泥や水を攪拌（かくはん）する役割も担う「竹取神事」が行われる。続いて赤い衣装を着た倭姫命（やまとひめのみこと）に扮（ふん）した太鼓打ちが田舟に乗り田楽を奏で、早乙女らが一苗ずつ丁寧に田植えを行った。

　香取神宮（千葉県香取市）と住吉大社（大阪市住吉区）の御田植祭と共に日本三大御田植祭の一つされる同祭は、「磯部の御神田（おみた）」として国の重要無形民俗文化財の指定を受ける。平安時代末期か鎌倉時代初期から続くとされる。第11代垂仁天皇の皇女・倭姫命（やまとひめのみこと）が伊勢神宮に納める神饌（しんせん）を探し求めて志摩を訪れた時、7匹のサメが野川を遡上（そじょう）し、伊雑宮の鎮座地を示したという「七本鮫伝説」や、昼夜鳴く一羽の白真名鶴が稲穂をくわえていた「白真名鶴伝説」「鶴の穂落とし伝説」が残る。

　早朝から降っていた雨は祭典が始まる頃には上がった。竹取神事が始まると再び降り出したが、御田植神事が始まると再び雨は上がった。神田では、田楽の音色が響く中、早乙女と田道人による田植えが続いた。

　地元・磯部町出身の女性は「毎年、御田植祭にはどんなに晴れの天気予報だとしても、一滴でも雨が降ると言われている。ここ数年私が知る限りでも『記録』は更新されているはず。今日も恵みの雨が降った」と話す。

　御田植祭は、磯部町の9地区（五知、上之郷、沓掛、山田、下之郷、穴川、迫間、築地、恵利原）が7年に1度の輪番で祭典を奉仕する。今年は沓掛と山田地区が担当した。