
第63回神宮式年遷宮の祭典の一つ「御船代祭(みふなしろさい)」が9月17日、伊勢神宮内宮(ないくう)内の風日祈宮橋(かざひのみやばし)上流左岸に設置された祭場「宮山祭場」で執り行われた。
20年に1度、伊勢神宮の社殿や神宝などを新しくし、ご神体を新宮(にいみや)に移す式年遷宮の行事が、5月2日の「山口祭」「木本祭(このもとさい)」で始まり、長野県上松町で6月3日に「御杣始祭(みそまはじめさい)」、岐阜県中津川市で6月5日に「裏木曽御用材伐採式」が、6月9日・10日には長野と岐阜で伐採されたご神木のヒノキが伊勢まで陸送され、そのご神木を陸曳(おかび)きと川曳(かわび)きで神宮内に引き入れ「御樋代木奉曳式(みひしろぎほうえいしき)」が、それぞれ滞りなく執り行われた。
御船代祭は、ご神体を納める器「御樋代(みひしろ)」をさらに納める大きな器「御船代」に使う用材のヒノキを伐採する祭典で、作業の安全を祈願するもの。日時は天皇陛下により定められている。
祭場には、正宮(しょうぐう)、荒祭宮(あらまつりのみや)、月読宮(つきよみのみや)、月読荒御魂宮(つきよみあらみたまのみや)、伊佐奈岐宮(いざなぎのみや)、伊佐奈弥宮(いざなみのみや)、瀧原宮(たきはらのみや)、瀧原竝宮(たきはらのならびのみや)、伊雜宮(いざわのみや)、風日祈宮(かざひのみや)、倭姫宮(やまとひめのみや)の順で祭壇が並べられ、それぞれに四隅と中央に5色の弊(みてぐら)が立てられている。10時から正宮で、続いて11時から第1別宮の荒祭宮でそれぞれ御船代祭が行われ、12時からは9社の別宮の祭壇で同時に御船代祭が執り行われた。
祭典は、それぞれにタイやアワビ、伊勢エビ、生調(いきみつき)の白鶏(生きたニワトリ)、生卵などの神饌(しんせん)が供えられると祝詞を唱え、八度拝を行う。物忌(ものいみ)と呼ばれる男子が鎌を掲げ、草木を刈り始める儀式を行い、続いて斧を掲げ、小工(こだくみ)と呼ぶ造営庁の宮大工と共に木を切る儀式を行った。ほぼ同時刻に長野県上松町の木曽谷国有林では、造営庁の技師らによってヒノキが古式の伐採方法「三ツ緒切り・三ツ紐(ひも)切り」によって伐採された。
物忌は、正宮が厚生小学校5年(10歳)の西本敬俊(ひろとし)君、荒祭宮が進修小学校3年(8歳)の林宜孝(よしたか)君、別宮が明倫小学校1年(6歳)の伊藤悠志君が、それぞれ務めた。
伊勢神宮広報室次長で神宮参事の音羽悟さんは「御船代祭は、正宮と内宮の別宮10社計11社の祭典を同じ祭場で行い、さらに別宮9社の祭典は一斉に行われるのでとても珍しい。祭典は神宮神職の宮掌(くじょう)によって進行されるので『宮掌の祭り』とも言われている」と説明する。
9月19日も同様の祭典が外宮(げくう)で執り行われる。