真夏の太陽の下、かれんな黄色の花を咲かせるハマボウが1,000株以上群生しマングローブとなっている伊勢路川河口(度会郡南伊勢町内瀬)の中洲で現在、太陽の光をたくさん浴びて咲いた花が咲ききった後、役目を終え落花し海に流れる様子が見られる。
ハマボウは、学名ハイビスカス・ハマボウ(Hibiscus hamabo)アオイ科フヨウ属。花はハイビスカスに似た形状で淡黄色、中心部は暗赤色、直径5~8センチ。朝開いて夕方に咲き終わる一日花で日本原産のハイビスカス。三重県のレッドデータブック・絶滅危惧(きぐ)II類(絶滅の危険が増大している種)に指定されている。
一般的に熱帯・亜熱帯地域の河口汽水域の塩性湿地にしか生育しない植物で構成される森林をマングローブ、それらの植物をマングローブ植物と呼ぶが、マングローブ植物に類似した植生を持ち、なおかつ陸地でも生育する植物で構成される森林を半マングローブと呼ぶ(広義のマングローブ)。ハマボウやハマジンチョウ、ハマナツメなどが半マングローブ植物に分類される。
ハマボウの群生でできたマングローブには、さまざまな生物が生息する好環境を提供し、「生命の揺りかご」とも呼ばれる。
伊勢・二見興玉(おきたま)神社(伊勢市二見町江)に毎年ハマボウの苗を奉納する松阪市三雲町在住の刀根政郎さんは「ハマボウは河口や海浜に咲き、きれいな黄色の花を咲かせる。落花するとそのまま海に流れ、世界に通じる海に落ちた花が戦友たちへの献花に」と戦死した戦友への慰霊と世界平和への祈りを込める。2000年から続ける刀根さんの思いは、県内各地の海岸で力強く確実に「生命の揺りかご」としての自然環境だけでなく、人々の「心のマングローブ」としても深く根付いている。