アオサの養殖が英虞湾や的矢湾、五ヶ所湾など海岸沿いの浅瀬で始まった。伊勢志摩の海岸が「緑のじゅうたん」で覆われるころ、この地方にも冬がやってくる。
南伊勢町五ヶ所浦の「緑のじゅうたん」を山の上から見下ろす絶景ポイント
全国漁業協同組合連合会の2009年度資料によると、アオサの全国生産量732トンに対して三重県は397トン(そのうち志摩市だけで7割以上を生産)。農林水産省の2008年度資料では、バラノリの項目(アオサを含む)で全国生産量909トンに対して三重県は495トンとなっていることからも全国で三重県のアオサの生産量が断トツ1位であることがわかる。中でも伊勢志摩地域だけで全国の4割以上の生産量を占めている。
アオサとは、ヒトエグサと呼ばれる海藻の一種で、主に青のりやノリのつくだ煮の原料。近年加工せず、そのままを、サラダやみそ汁、天ぷらなどの食材として使用し一般化されつつあるが、全国的にはまだまだマイナーな食材。これまで多くのメディアで紹介され、健康ブームを背景に、ビタミンAがカットわかめや干しひじきに比べて多く含まれていることなど、その栄養成分に注目が集まっている。
アオサの養殖は、12月の水温が26度以下になるころ種付けした養殖網を波静かな浅瀬にくいを打って張っていく。1月から4月ごろまで摘み取り作業を繰り返し、摘み取ったアオサを水洗いし、天日や機械で乾燥させ、ゴミや異物を取り除いた後出荷する。三重県の生産者のほとんどがみえぎょれんのり流通センター(松阪市中央町)に出荷。今期最初の入札は来年2月3日に予定され、生産者はそれに合わせて出荷準備に精を出している。
南伊勢町五ヶ所浦の生産者は「今年は暖かく、気温が下がり水温が低くなるのが遅かったため例年よりも20日ほど成長が遅いが、一雨ごとに成長し例年通りの出荷になるのでは」と話す。
2008年に志摩市が「あおさプロジェクト」を、志摩市商工会が「あおさグルメ開発事業」を同時に立ち上げた。生産、加工(商品開発)、流通面から支援し、「あおさ」のブランディング化を図り、消費拡大を促進しようと取り組んでいる。「あおさ焼酎」「あおさまん」「アオサ潮ようかん」「あおさチップス」「あおさパン」「あおさアイスクリーム」などアオサ関連の商品群も完成し、順調に売り上げを伸ばし始めている。