日本のバリアフリーツアー観光の基礎を作ったNPO法人伊勢志摩バリアフリーツアーセンター(鳥羽市鳥羽)が伊勢市の委託を受け伊勢のまちをチェックし、その報告会と同NPO理事長中村元さんの講演会が3月16日、伊勢商工会議所(伊勢市岩渕)であった。
2001年から活動する同NPOは、伊勢志摩を日本一のバリアフリー観光地にするため、「身体が不自由な観光客」の視点で同地域内施設のバリアフリー度調査を行い、その結果を施設へアドバイス、観光事業者や障害者、高齢者などをサポートするボランティア団体。観光を目的に来る身体が不自由な人への観光案内などが主な業務。事務局長の野口あゆみさんは「私たちは、お客さまのしたい旅行を、『行けるところ』より『行きたいところ』をご案内し、ご満足いただけるようにすることを目的に活動している」と話す。
報告会は伊勢市障害者外出支援対策アドバイザー業務委託を受けたもので、公共・交通機関のバリアフリー度をチェックし写真を交えて報告した。
中村さんは講演の中で「『ユニバーサルデザイン』は、いろいろな人が使えるようにする『もの(工業製品)』を基準としていること。われわれが日本で初めて作った『パーソナルバリアフリー基準』は、まちのすべてのバリアーを調べ尽くし『人』を基準にしたこと」と説明。「われわれは伊勢志摩のバリアーを調べ尽くしている。だから旅行を希望する人の障害の程度や本人の積極度によって、それぞれの希望に近い形の旅行を提案し実現させることができる」と胸を張る。
さらに、「『人に優しいまち』とは、誰もが頑張れば実現できるまちのこと。誰もが普通のことを普通にできること。障害者も高齢者もみんな一人前だと考え特別扱いしない意識を持つこと。どんなに素晴らしいバリアフリー施設を作っても、その意識がなければ人の心にバリアーができてしまう」と中村さんは話す。
同NPO設立後の伊勢神宮内宮における車いす利用者数は、2000年から2010年までの数字を比較すると約5倍以上になり、鳥羽水族館やミキモト真珠島でも障害者入場券購入者の割合は増加している。
現在、「パーソナルバリアフリー基準」を基にしたバリアフリーツアーセンターが、同NPO も加え全国14地域に立ち上がった。さらに地域間の連携を図ろうと「日本バリアフリーツアー振興機構」が4月の設立を目指し準備を進めている。