「海女の流儀」と題して伊勢志摩の海女を特集した三重県のローカル季刊誌「NAGI(凪)」50(秋)号が、県内の書店に並んだ。発行は「月兎舎(げっとしゃ)」(伊勢市馬瀬町)。
約3000年前の遺跡だという鳥羽市にある白浜遺跡(浦村町)からは、大量のアワビの殻や専用の漁具が見つかっている。当時から海に潜ってアワビやサザエなどの貝を採っていた人々が生活していたと考えられている。広域伊勢志摩圏内の、特に鳥羽市から志摩市の太平洋に面する海岸地域の漁村を中心に、今も現役で活躍する海女がいる。その数は全国一を誇る。
特集では、海女の暮らし、海女が採ったアワビを提供する伊勢志摩の飲食店、海女を題材にしたアーティストなどを紹介。「遅咲きの海女」と呼ばれる、50歳で海女デビューし現在72歳の現役海女・西井正子さんのはつらつとした姿や、皇学館大学(伊勢市神田久志本町)文学部コミュニケーション学科3年・現役女子大生海女の中川静香さん(21)と母・早苗さん(40)、祖母・寿美子さん(73)の3世代海女、ミキモト真珠島(鳥羽市鳥羽)で活躍する観光海女などの姿を追った。
「海女」をユネスコの世界無形文化遺産に登録しようと活動する海の博物館(鳥羽市浦村町)の石原義剛館長と同誌の坂美幸編集長との海女対談も6ページにわたり収録した。
坂編集長は「全国の海女の数は50年で8分の1に、県内でも4分の1にまで激減し、さらに現役海女の9割が50歳以上の高齢者。産業の全てが効率化を進める中、海女は今も体一つで獲物と対峙(たいじ)している。持続可能な食やエネルギー資源との付き合い方が求められている今、海女漁は原始的でありながら未来的なのかもしれない。海女から、現代人が忘れてしまった日本人らしい生き方を見つめ直すきっかけになれば」と話す。
価格は670円。