伊勢調理製菓専門学校(伊勢市河崎)の卒業生で三重県立美術館の中にあるフレンチレストラン「ミュゼ・ボンヴィヴァン」(津市大谷町、TEL 059-223-7070)のシェフ・出口直希さんが2月25日、同校の調理師科・製菓衛生師科の生徒30人を前に講師を務め、シカ肉を使った「ジビエ料理特別授業」を行った。
フレンチレストラン「ミュゼ・ボンヴィヴァン」シェフ、伊勢の調理学校でシカ肉料理講習
ジビエはフランス語で狩猟で得た野生動物の肉などの総称を指し、シカ、イノシシ、ウサギ、キジ、ハトなどの肉が一般的。近年日本国内ではシカやイノシシの頭数が増え、農業や林業への被害が拡大している。獣害対策の一環としてシカやイノシシを食べようと、その利活用の一つでジビエ料理が注目されている。三重県でも2011年、ニホンジカ4億504万9,000円、イノシシ1億8,810万2,000円の被害が報告され、獣害対策に力を入れている。
1959(昭和34)年創立の同校は、厚生省(現厚生労働省)より調理師養成施設全国第1号の指定を受ける歴史ある専門学校。伊勢学園高等学校(黒瀬町)や伊勢保健衛生専門学校(同)などと共に学校法人伊勢学園が運営する。「ミュゼ・ボンヴィヴァン」は今年30周年を迎える伊勢神宮外宮前のフレンチレストラン「ボンヴィヴァン」(本町)の姉妹店。
当日、出口さんは2歳の県産メスジカの肉、半頭分を用意し、肉の部位ごとの特徴、さばき方、火加減などを説明。「シカ肉と野菜のブイヨンスープ」「シカ肉のロースト(冷製)」「シカひき肉と野菜のファルシ(南仏風)」の3品を調理した。
出口さんは「三重県では獣害対策として約1500頭を駆除したが、そのうち食べられるなど有効活用されたものは800頭とまだまだ少ない。(シカ肉の流通を促進させるために)みんなの柔軟な発想力で新しいシカ肉料理を作る意識付けになれば」と期待を込める。「シカ肉は、ほとんどが赤身で高タンパク低脂肪、鉄分の含有量も非常に多い。臭いという先入観があるがしっかりと処理した肉は全く臭みがなくおいしい。信頼のおける猟師と付き合うことがいい肉を仕入れるコツ」などと説明、オリジナルの料理法などを後輩に伝授した。
将来イタリアンレストランを開く夢を持つ小山雄希さんは「シカ肉は初めてだったが、臭みもなく、とてもおいしかった」と感想を漏らす。同校の中西久校長は「出口さんは在校中、球技大会であばら骨を4本折るなど、正直なところ手の掛かる生徒だったが、このようにしっかりとした意識を持って後輩に教えてくれるようになったことはとても誇らしい。とてもうれしい限り(笑)」とコメントを残す。