国内の90%以上が中国と韓国からの輸入物・養殖ヒジキで占められる昨今、鳥羽の相差(おおさつ)、石鏡(いじか)などで大潮に当たる4月10日、天然のヒジキの口開け(ヒジキ漁の解禁)があり、漁業者らが一家総出で海中の岩場に自生するヒジキを刈り取る作業が行われた。
80歳のおばあちゃん海女も活躍、鳥羽市相差の海岸でヒジキ漁解禁
荒磯で波にもまれ、干潮時には天日や潮風にさらされる厳しい環境下で育つ天然のヒジキは、コシが強く、表面がつやつやし、養殖物と比べて断然おいしいと評判だ。サクラの開花と共に、この地域の春の訪れを感じる作業の一つとなっているが、国産天然物のヒジキは今や「貴重な食材」となってしまった。
国は2007年、統計業務の効率化などを理由に「統計法」の改正を行った。その際に「ヒジキ」や「ワカメ」など海藻類の分類を「コンブ」以外全て「その他の海藻類」とまとめてしまったためヒジキだけの生産量を把握していない。
「実は三重県の天然ヒジキの生産量は、全国1位なんです」と、本年度の三重県観光キャンペーンのキャッチコピー「実はそれ、ぜんぶ三重なんです!」をもじって説明するのは、「伊勢ひじき」の加工生産を200年前からなりわいとしている北村物産(伊勢市東大淀町)の北村裕司さん。
北村さんによると「統計データで分かる2008年までは、長崎県が断トツ1位で、次に千葉県、3位に三重県だったが、(全国的に凶作だった昨年の数字はあまり参考にはならないが)2011年には乾燥重量で、三重県が約313トン(千葉県=約250トン、長崎県=約250トン)で全国1位の生産量だった」と打ち明ける。
昨年から鳥羽磯部漁協相差支所理事を務める野村敏光さんは、これまでの漁業を見直し改革に取り組む一人だ。野村さんは、5月解禁のヒジキ漁を今年から1カ月早くし、大潮の日の9時から12時までの3時間の作業とするルールに変えた。「早く取れば、花も咲かないので、品質がいいものが取れる。今年初めてやってみたが初日から、漁業者の評判上々。品質のいいヒジキができるのは間違いない。高く買ってくれるとうれしいのだが(笑)」と笑みを浮かべる。
刈り取ったヒジキは、すぐに天日干しされる。3~5日間かけ乾燥させた後、市場に出荷され、全国の加工業者により仕入れ加工・袋詰めされ、小売店などに並べられる。