伊勢神宮の祭典で供える米や酒や餅などの原料となる米を作る神宮神田(伊勢市楠部町)で9月5日、「抜穂祭(ぬいぼさい)」が執り行われた。
台風17号の影響で前日の伊勢市内は竜巻が発生するほどの悪天候だったが、この日は台風一過で秋晴れの快晴。時折吹く風はとても爽やかで、大きく育ち黄金色に染めた約3ヘクタールの神田全体をさわさわと揺らしていた。
祭典は、鷹司尚武大宮司をはじめ神宮関係者ら約70人が見守る中、神様に神饌(しんせん)を奉納し実りに感謝する祝詞(のりと)を上げた後、白装束の作丁(さくてい)10人のうち2人が忌鎌(いみがま)と呼ばれる鎌を持ち神田に入り稲を刈った。続いて刈った稲を一本ずつ穂を抜き、麻ひもでくくって2束にした。
作長の山口剛さんは「今年は猛暑で稲の実りが心配だったが、例年通り実り、無事収穫することができる。お白石持ち行事の川曳きが終わった後、五十鈴川の水が干上がったが貯水池からの補給で水不足の心配はなかった」と説明する。
この日に刈り取った稲はチヨニシキで、神田ではうるち米やもち米など10種類の米を作っている。収穫は今月いっぱいまで続き、1989年同地域で2度の台風襲来を受けほとんどの米が倒され全滅かと思われた中で神田の中央に2株だけ倒されずに残っていた稲から種苗を取り増やしたとされる「幻の米」イセヒカリの収穫は今月末ごろ最終を予定する。