伊勢神宮の天照大神(あまてらすおおみかみ)を祭る内宮(ないくう)と豊受大神(とようけのおおみかみ)を祭る外宮(げくう)でそれぞれ執り行われてきた一連の式年遷宮行事が9月29日~10月6日までの期間で一区切りを迎えたが、その期間中の天気はドラマチックで「まさに神業」だった。
9月28日(内宮)、29日(外宮)それぞれ10時からの杵築祭(こつきさい)、内宮での10月1日8時からの後鎮祭(ごちんさい)、10時からの御装束神宝読合(おんしょうぞくしんぽうとくごう)と快晴の空で執り行われた。10月1日16時からの川原大祓(かわらおおはらい)に至っては、祭主、神職、神宝など全てを祓い清める儀式にふさわしくその時だけ雨が降った。祭主、神職は傘を差し、神宝などが入れられた辛櫃(からひつ)はきれいに雨で清められた。
内宮10月2日は、台風22号の進路が心配されたが日本列島の東寄りに進路を取ったため関東地方の一部で暴風雨になったが伊勢地方は特に問題なく、その日の12時からの御飾(おかざり)、20時からの遷御(せんぎょ)は共に素晴らしい晴れの日となった。翌日3日も快晴。6時からの大御饌(おおみけ)、10時からの奉幣(ほうへい)、14時からの古物渡(こもつわたし)、17時からの御神楽御饌(みかぐらみけ)、19時からの御神楽(みかぐら)は全て晴れの天候で行われる「晴儀(せいぎ)」で執り行われた。(雨天は「雨儀(うぎ)」として屋根のある場所で祭典が行われる)
10月4日から6日までの外宮での祭典は、台風23号の進路が非常に心配された。台風は北寄りに進路を取ったため最悪の事態は回避できたが太平洋にある高気圧と台風に挟まれた日本列島は湿った空気を全身にまとい天気予報では雨。しかしながら4日は曇りながらも、祭典が行われた時間では一滴も雨は降らなかった。
式年遷宮のクライマックスとなる遷御が執り行われる新月の5日は天気予報でも当初から雨を予想していた。約4000人の奉拝者も雨合羽を用意して臨んだ。刻一刻変化する天気を誰もが心配していた。16時30分の天気予報で、遷御が執り行われる18時~21時の時間帯の予報が雨から曇りに変わった。19時30分ごろから断続的に少しだけ雨が降ったが傘を差さないでも問題ない雨量。気象衛星が撮影した19時30分の画像には台風の目がハート型になっていた。そして祭典終了と同時に雨が降った。
神様の引越し=遷御を無事終えた翌日6日は、前日の一雨によって澄んだ空気で太陽の光が伊勢神宮全体を光り輝かせていた。気象庁天気相談所担当者によると「台風22号、23号の影響で非常に不安定な天気が続いた。特に23号と太平洋上の高気圧により湿った空気が日本列島を覆い雨が降ってもおかしくない状態だった。23号が少しでも東寄りに進路を取ったら伊勢地方はもっと雨が降っていたかもしれない」と解説する。「10月5日19時30分の気象衛星が撮影した画像に映し出された台風の目は、確かにハート型に見えなくもない(笑)」と付け加えた。
2005(平成17)年5月2日の「山口祭」から始まり、2013(平成25)年10月6日の「御神楽(みかぐら)」まで33(外宮・内宮合わせると60)の祭典、天皇陛下が日時を決定する御治定(ごじじょう)によるものは12(同24)に及んだ。
天皇陛下は、その日が最もふさわしい日として10月2日、5日を遷御の日に選定された。1929(昭和4)年第58回式年遷宮を描いた絵巻には雨儀廊(うぎろう)は描かれていない。両宮の正宮から新宮まで雨儀に備える雨儀廊が設置されたのは戦後になってからだという。雨儀廊も設置し万全の体制で臨んだものの、ほとんど役目を果たさなかった。まさに「神業」。
10月9日は伊勢神宮別宮「荒祭宮(あらまつりのみや)」の祭典が行われた。この日もドラマチックな天気だった。式年遷宮関連行事はまだまだ続く。