代々木高校賢島本校(志摩市阿児町)で2月6日~7日、1泊2日の一風変わった「伊勢志摩料理人コース」の入学試験が行われた。
「伊勢志摩料理人コース」は同校が開校した翌年の2007年から始めた特別コースで、伊勢志摩の旅館やホテルなどで働き、料理の勉強・経験を積みながら高校に通い卒業を目指すことができる。生徒は各施設の寮に住み込み月々の給与も支給され、修業中の時間も単位として認められるメリットがあり、さらに在籍中に調理師免許やふぐ取り扱い資格の取得も可能となるため注目を集めている。
入学試験は、人生経験の浅い受験生たちがすぐ社会に飛びみ継続して就業できるかを判断するためのテスト。筆記試験とは別に、1人だけで朝決められた時間に起床できるか?掃除・洗濯など基本的なことができるか?あいさつや言葉遣いなどコミュニケーション能力があるか?などをチェックする。調理実習では調理場となる実践現場を想定し、集団行動が取れるか?先回りした行動ができるか?時間管理、リスク回避など計算した行動ができるか?などをチェックし適正を見た。
この日受験したのは東京、神奈川、山梨、岐阜出身の男子4人。子どものころに料理を作った時に「おいしい」と褒められたことや料理が好きで自分が作った料理で人を感動させたいなどさまざまな志を持って入学試験に臨んだ。
同校の粉川聖典(こかわきよのり)副校長は「朝、親が起こしてくれることが当たり前であっただろう環境から、いきなり自分の力だけで起きなければいけない環境に変化するわけで、旅館などの現場では、朝食の準備で忙しいのに遅刻などはもってのほか。自立して朝起きることができるか?そこをチェックするために1泊2日のテストを行っている」と説明する。
7日朝は「7時に教室集合」がお題。4人は時間に間に合うように身支度を整え5分前に入室完了。「超難問」を見事クリアし、即日、合格通知を手にすることに。その後、県内の調理師らでつくる「伊勢志摩料理クラブ」(鳥羽市)の会長を務め同校顧問の掛橋友二さんとの面談が行われ、仕事の厳しさ、親から離れ自立して生活しなければならないことなど、「覚悟」の再確認が行われ、問題ないと判断され、4人全員に修業先となるホテルや旅館が紹介された。
掛橋さんは「近年は昔のように中学卒業者(15歳以上)が調理人として就職することはまれで、雇用先の宿泊施設にとっては、技術の習得率が高い若い時期から調理の仕事を指導し実践させることにつながるため、人材不足が叫ばれる調理人業界においても優秀な人材育成ができるメリットがある」と話す。
4人は、それぞれの中学校の卒業式を終えるとすぐに単身現場に入り、4月19日に予定する同校入学式を待つ。