二見興玉神社(伊勢市二見町)境内社「竜宮社」で6月19日、津波の教訓をいつまでも忘れないように、災害が起こらないように祈願し被災者を供養する神事「郷中施(ごじゅうせ)」が行われた。
1792(寛政4)年、この地方を襲った大津波によって二見町江(え)地区の民家約20戸が流出し、残った家はわずか5、6軒という災害があった。その時、同神社の氏子たちが施し合い助け合い、水難を克服したという。
郷中施は、この教訓を後世に伝えるために、海の神・綿津見大神(わたつみのおおかみ)を祭る竜宮社において、被害のあった旧暦の5月15日に毎年欠かさず執り行われている。昭和天皇の御製「天地(あめつち)の 神にぞいのる朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を」を拝誦(はいしょう)し、みこ(巫女)が「浦安の舞」を舞う。
神饌(しんせん)には、子どもから大人まで理解できるように「(津波を)急に、見るな、待つな」の語呂合わせで「キュウリ(野菜)」「ナス(同)」「ミル(海草)」「マツナ(海浜性植物)」を木舟に載せて供える。祭典が終了すると竜宮社前の竜宮浜から巫女2人が海水に腰まで漬かり神饌を海に流す儀式を行う。
55年前に嫁いでから同町に住む山下典子さんは「嫁いだすぐは、キュウリやナスが供えられていたので豊作祈願の祭りだと勘違いしていた(笑)。義母から津波の教訓を忘れないようにという祭りの意味を知り、そんな素晴らしい祭だったのかと恥ずかしくなった記憶を思い出す。後世に伝えなければとそれ以来、毎年祭りに参列しお祈りしている。中学1年生になる孫にも伝えている。多くの人に知ってほしいお祭り」と話す。