「あほう!こんな盛りつけで出せるか!急いでても、ていねいに真心込めて盛りつけするんや!」――日本で唯一の高校生レストラン「まごの店」(多気郡多気町五桂、TEL 0598-39-3860)厨房でのひとコマ。今年3月、三重県立相可(おうか)高等学校(同郡同町相可)食物調理科の専門調理師教諭兼、同高校調理クラブ顧問を務める教師の村林新吾さんが、同店の誕生秘話をつづった「高校生レストラン、本日も満席。」(伊勢新聞社)を執筆した。
同店は、調理からサービス、メニューの考案、会計管理に至るまですべて同高校調理クラブの生徒が運営する「高校生のレストラン」として、2005年2月19日にオープン。店舗の営業は、学業優先のため土曜・日曜・祝日と夏休みなど学校の長期休暇日に限定。にもかかわらず常に開店前から店の前には行列ができるほどの人気で、約2時間で230人分の料理が完売する。生徒は毎回真剣勝負で臨み、実践の場として多くを学び、料理人としての道はもとより人間としても大きく成長できる場となっている。
松阪市出身の村林さんは大学卒業後、大阪あべの辻調理師専門学校(大阪)に入学。卒業後、そのまま同校で10年間教べんをとる。1994年に相可高校食物調理科の創設を機に三重に戻り、現在に至る。昨年は「文部科学大臣優秀教員表彰」を受賞した。
同書は村林さんが「まごの店」や同高校調理クラブ、食物調理科の今日に至るまでの日々を赤裸々に告白。教育者としての葛藤や喜怒哀楽、多気町役場の岸川さんや同店がある「五桂池ふるさと村」(同)の河合村長との出会いなどをまとめている。
同書の企画を担当した伊勢新聞社の村山聡美さんは初めて相可高校を訪問した際、「とある生徒に村林先生はどんな先生?と尋ねると『料理に対してはとても厳しい』と返ってきた。将来、料理人になったら自分の店を持ちたいかと尋ねると、『いつか自分の店を持てるようになったら、最初のお客さんは村林先生がいいです』と言う。その生徒の言葉に心が揺れ、どのような半生を歩み、どのような教育をしているのか。先生に興味を持ち原稿執筆を依頼した。一方で、同校生徒を応援してあげようと『まごの店』設立に携わったメンバーをどうしても本に登場させたかった」と振り返る。「4月に日本図書館協会選定書に選ばれたこともあり、全国の学校・食育関係の方からの問い合わせが入っている。多くの方に読んでいただき、教育の現場に元気を与えられれば」(村山さん)とも。
伊勢新聞社ホームページ、全国の書店で販売中。価格は1,890円。「まごの店」人気メニューのカラーレシピ集付き。
「懐かしの昭和」を特集-タウン誌「NAGI」(伊勢志摩経済新聞)まごの店「高校生レストラン、本日も満席。」(AMAZON)伊勢新聞社「高校生レストラン、本日も満席。」伊勢新聞社出版部ブログ